研究課題
今日、金融業は、情報通信技術の急速な進歩によって、「フィンテック(Fintech)」と呼ばれる新しい金融サービスが次々と登場するなど、100年に一度の大きな変革期を迎えている。そうしたなか、金融論やその関連の分野において、これまでとは全く異なる新しい枠組みで金融機関の機能や規制のあり方を分析する必要性が高くなっている。そこで本研究では、(1)フィンテックの登場による金融の新しい機能とリスク、(2)フィンテックの拡大に伴った新しい金融システムの制度設計、の2つのテーマに焦点を当てた理論的・実証的分析を行う経済学の研究グループを形成すると同時に、他分野の研究者、政策当局者、実務家とも意見交換を行うことを通じてその政策的インプリケーションを導出した。分析は大きく分けて2つのグループで行った。第1のグループでは、金融の新しい機能とリスクするため、IT事業者が既存の金融ネットワークに中間事業者として介在してビジネスを展開する仕組みと、「ブロックチェーン」とよばれる技術を駆使して独自に分散型ネットワークを形成する仕組みをそれぞれ考察した。一方、第2グループでは、フィンテックが拡大するなかで、銀行を中心とした従来の金融制度をどのように再構築すべきかを分析した。金融分野で異業種からの参入が活発になるなかでも、預金業務だけは依然として銀行以外が営むことは厳しく禁止されている。これは、預金業務に信用創造メカニズムがあり、それに起因するシステミックリスクが存在するからである。他方、銀行以外の他業種が、オープンAPIという形で預金者の情報にアクセスしたり、預かり金といった形で資金を受け入れたりするケースも増えている。そうしたなかで、預金業務の機能も従来とは異なる視点からの制度設計が必要で、第2グループの分析ではそこに特に焦点を当てて考察を行った。
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