研究課題/領域番号 |
20K20758
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大槻 恒裕 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (40397633)
|
研究分担者 |
高阪 章 大阪大学, 国際公共政策研究科, 名誉教授 (00205329)
新開 潤一 近畿大学, 経営学部, 講師 (10571648)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
|
キーワード | 企業の市場支配力 / デジタル経済 / 投資停滞 / 日本の成長戦略 |
研究実績の概要 |
2020年度には、企業の財務資料や、有形・無形資産への投資、特許の申請・保有数、研究開発費などの生産性に関連するデータ及び資料を収集する予定であったが、コロナウィルス感染拡大の影響で、調査は2021年度に延期し、主に、既存データによる現状分析、資料収集、及び文献のサーベイを中心に研究を進めた。また、同年予定されていた市場支配力や有形資産の企業アンケート調査も、同様の理由により2021年度に延期することとなった。市場支配力や有形資産の過小度合いについても、既存データによる現状分析、資料収集、及び文献のサーベイを中心に研究を進めた。現状分析では、投資に関しては、2000年以降、企業の借り入れ費用の低下や高収益による企業の過剰貯蓄、さらに投資への高い期待収益率にもかかわらず、先進国企業の設備投資は(トービンのQで見て)過少であるという指摘に対して、既存データによる再検証を行った。また、Diez, Leigh, and Tambunlertchai (2018) 及びGutierrez and Philippon (2017)などの主張である、近年の企業の市場支配力が上昇や、投資の停滞を及ぼしていることについて米国外の状況についても既存データによる再検証を行い、先進国に限られるが同様の傾向が見られることが分かった。また、それらの準備的研究と並行して、すでに取りかかっていた、技術的規制が途上国企業の投資行動や研究開発行動に関する共同研究を完成させ、その論文はInternational Economic Journalに掲載された。また、グローバルバリューチェーンにおける企業の投資行動や研究開発行動に関する共同研究もその成果をまとめ、その論文はOSIPP Discussionに掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の進捗は当初計画よりやや遅れており、主な理由は、コロナウィルス感染拡大による国内および国外でのデータ収集やアンケート調査の困難である。ただし、既存データにより一定の分析の進捗があったことと、資料収集や文献サーベイにより、研究の基礎となる知識基盤を蓄積することが出来たこと、アンケート調査票の作成が進めることが出来たこと、さらに、違う視点からのアプローチにより論文を完成させることが出来たことから、データ収集やアンケート調査の遅れをある程度補完出来ており、遅れは最小限に留めることが出来ていると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
2年目である2021年度は、コロナウィルス感染が収束すれば直ちにデータ収集とアンケート調査を実施する。感染状況が改善しない場合は、アンケート調査をインターネットベースで行う。データ収集については、2022年度に延期する。 データ収集が可能となりデータがそろえば、2021年8月にかけて、新開と高阪が主導で前述のマークアップの推定を行い、さらに、2021年8月から10月にかけて、マークアップの計測を通じて、産業別の動向や市場支配力を持つ企業の特徴を明らかにする。有形資産への投資の過少度合いの計測にはトービンのQを利用する。さらに、2022年1月から3月にかけて、大槻が主導で経済成長の弱さや借入れ制約などの要因、さらに無形資産投資へのシフトや海外直接投資といった投資形態の変化も考慮しながら、日本企業の設備投資の過小度合いを計測する。これら研究の進捗については、ワーキングペーパーにまとめ、学会発表も行う。 3年目である2022年度は、市場支配力が生産性成長に与える影響とその経路について明らかにし、今までの作業をもとに、大槻、新開、高阪が連携して、日本において企業の市場支配力は強まっているのか、投資停滞やイノベーションの阻害などを通じて生産性の低下が生じているのかを考察し、今後の持続的な生産性向上を目的とした成長戦略へのインプリケーションを導く。その研究成果を2022年9月から10月に論文としてまとめ、学会で報告を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度においては、コロナウィルス感染拡大により、国内の移動や海外渡航が困難になったため、旅費、データ収集における費用及びアンケート調査の費用が翌年度に繰り越された。今年度は、国内旅費25万円、海外渡航費110万円、データ購入費50万円、アンケート調査費50万円、物品費60万円、人件費・謝金20万円等支出予定。
|