研究課題/領域番号 |
20K20760
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
早川 和彦 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 教授 (00508161)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | パネルデータ / VARモデル / EMアルゴリズム |
研究実績の概要 |
本研究では,パネルデータを用いたベクトル自己回帰(VAR)モデルの推定について考察している。本年度は,クロスセクションごとに均一の自己回帰係数を持つVARモデルの推定について考察した。 具体的には,伝統的な個別効果と時間効果が加法的に含まれたモデルの拡張として,個別効果と時間効果が乗法的な形になっている相互作用効果を持つパネルVARモデルの最尤推定について考察した。このようなVARモデルの最尤推定量の計算負荷は,パネルデータの時間の長さTの大きさによって大きく異なり,一般的に,Tが大きくなればなるほど,推定するパラメータ数が増加し,計算に時間がかかる。さらに,パラメータ数が多いと数値最適化の結果も不安定になる傾向がある。そのため,Tが大きい時は,計算負荷と精度が優れたアルゴリズムを使う必要がある。 最尤推定量の計算には,ニュートン・ラフソン法がしばしば用いられるが,上記の問題により,Tが大きい時には望ましいアルゴリズムではない。そこで,本研究では,上記問題を克服する手段として,Expectaion-Maximazation(EM)アルゴリズムを提案した。EMアルゴリズムは,モデルによって計算手順が変わるため,まず,理論的にEMアルゴリズムの具体的な計算手順を導出し,それに基づいてプログラムを作成した。数値実験から,提案されたEMアルゴリズムは,計算時間・計算精度の点から十分に良いパフォーマンスを持つことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点で、本研究課題で主に考察するモデルの推定アルゴリズムが完成しているため、順調に進んでいると判断した
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題の1つとして,相互作用効果を含むパネルVARに基づいたインパルス応答分析があげられる。このモデルにおけるインパルス応答関数の理論的性質はまだ導出されていないため,まず,インパルス応答関数とその漸近分布を導出する。その後,数値実験を用いてパフォーマンスを調べる。先行研究では,時系列データに基づいたインパルス応答関数のパフォーマンスがそれほど良くないことが知られており,ブートストラップを用いた改善が必要な場合が多い。本ケースも同様の問題が生じる可能性があるため,ブートストラップの利用可能性も考慮しながら数値実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初参加を予定していた学会・研究会がすべてオンラインに変更になったため、旅費・謝金に係る支出が不要になった。 翌年度は、対面で開催される学会・研究会に積極的に参加する予定である。
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