研究課題/領域番号 |
20K20762
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大沼 あゆみ 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (60203874)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 下級財 / 効用関数 / 発展途上国 / 自然資源利用 / 国立公園 |
研究実績の概要 |
今年度は、本研究の目的の一つである発展途上国での資源利用についての研究を行なった。一つは、マレーシアにおける、高価で取引される、いわゆる「ツバメの巣」をめぐる問題である。これは、下級財とは対照させる奢侈品であり、採取が過熱することにより、アナツバメの個体数減少が発生した問題である。本研究では、近視眼的な採取者のグループを考え、持続的あるいは非持続的な採取行動を選択できるとき、アナツバメの生態的な特徴により持続的な採取行動が支配的になる可能性が存在することを示した。この研究は、査読誌 (Ecological Applications)に公刊された。 また、発展途上国の資源利用を含む、自然との関わりについて、ヒアリング結果に基づきボルネオ島における先住民の自然に対する価値観念についての研究を行なった。この研究では、とりわけ価値多元主義(value pluralism)の概念を考慮し、持続可能な資源利用と管理においては、先住民は将来世代にとっての価値をより考慮する傾向があることを論じた。この研究は、査読誌(Sustainability)に公刊された。 さらに、発展途上国の自然資源利用の管理形態としての国立公園の最適管理のあり方を理論的に研究した。特に、国立公園の目的関数として、「収入制約のもとでの生物多様性最大化」を、従来型の利潤最大化とともに考慮して最適行動の特徴を示した。この研究は未公刊であるが、共著者が国際学会である26th European Association of Environmental and Resource EconomistsおよびBioecono Conference XXIIで受理され報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍であったが、マレーシアにおける自然資源利用についての研究を公刊することができた。また、自然資源利用の管理についての理論研究も進んでいる。一方、効用関数を中心とした理論研究では、すでに完成はしているものの、まだ未公刊のままである。より包括的な形で公表の仕方について工夫を行うことが必要であると感じている。
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今後の研究の推進方策 |
一つは、効用関数にもとづく理論研究を論文としてまとめて、投稿する。一方、実証研究においては、コロナにより訪問することが適わなかったマレーシアへの訪問を行い、自然資源利用を下級財の観点から調査する。この調査に基づき、理論研究を行なって、持続可能な自然資源利用についての提言を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症のため、予定していたマレーシアでの現地調査を遂行することができなかったため次年度使用が生じた。今年度、マレーシアにおける現地調査を2回予定している。
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