本年度は、集合知メカニズムとして(1)サービス提供メカニズム (2) 分散型自律組織(DAO)を対象に研究をおこなった。 まず、(1)サービス提供メカニズムでは、サービスが経験財であるため事前にその品質を評価することが難しいという特性に着目した。この問題を解決するために、集合知を用いてサービスの品質情報を効果的に抽出し、適切なサービス提供を実現するためのメカニズムを提案した。具体的には、サービス利用者の経験を提案したスコアリングルールを用いて数値データとして集約し、これを基にサービス提供者が最適なサービスを設計・提供するフレームワークを提示した。 次に、DAOの安定性に関する研究では、DAOの参加者が組織を離脱する理由として、トークン価格の変動とガバナンスの役割が重要であることを明らかにした。特に、トークン価格の大幅な変動が参加者の退出を促す一方で、ガバナンス参加の効用が高い参加者は組織に留まる傾向にあることを実証データを用いて示した。この分析を通じて、DAOの設計においては、ガバナンスの仕組みを強化することが参加者の安定性を高める鍵となるという結論を導いた。 これらの研究を通じて、集合知のメカニズムデザインを通じた私的情報の抽出問題と組織安定化問題の対策の糸口を見つけることができ、特にデジタルガバナンスの分野での応用可能性を提示することができた。これらの成果をまとめたプラットフォームを構築することで、より多様で安定的なプラットフォームを実現できると考えられ、集合知メカニズムの社会的役割を明確にすることができた。
|