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2022 年度 実施状況報告書

所得に色はついているのか?ー老後に備えた資産形成を阻害する心理面の障壁ー

研究課題

研究課題/領域番号 20K20767
研究機関早稲田大学

研究代表者

尾崎 祐介  早稲田大学, 商学学術院, 准教授 (80511302)

研究分担者 大倉 真人  同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (50346904)
川村 哲也  帝塚山大学, 経済経営学部, 講師 (20643505)
研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2024-03-31
キーワード認知 / 予備的動機 / 慎重 / 節制 / あいまい性 / 経済実験
研究実績の概要

老後に備えた資産形成を考える際、(ノイマン-モルゲンシュテルン型)効用関数の三階微分、四階微分の符号が重要な役割を果たすことが知られている。三階微分が正の場合を慎重(prudence)、四階微分が負の場合を節制(temperance)と呼ぶ。また、実証研究においても Trautman et al. (2014, REStud) などにおいて両者の関係性が確かめられている。興味深い知見として、理論的には慎重、節制の両方が重要な役割を果たしている。しかしながら、既存の経済実験では、慎重については頑健に観察されている一方で、節制については両方の結果が混在している。この結果は、人々の真の選好を反映しているのか、あるいは、他の要素の影響なのかという疑問が生じてくる。本研究課題との関連でいけば、仮に真の選好を表しているとすれば、老後に備えた資産形成については専ら慎重に着目すれば十分であるという帰結になる。今年度は、このリサーチクエスチョンに対して、認知的負荷を加えるというトリートメントを加える経済実験を行うことで、一つの解答を与える研究を行った。慎重と節制を検証する経済実験では、節制が慎重よりも複雑な選択を行っており、それが既存研究での経済実験の観察と関連している可能性があるからである。実験で得られた結果として、認知的負荷は慎重に影響を与えていたが、その影響はそれを強める方向と弱める方向の両方であり、それらの影響が打ち消しあうことにより、平均的には認知的負荷が慎重の選択には影響を与えないという結論が得られた。つまり、経済実験で観察されている慎重と節制の違いが、その複雑さに起因することを否定したことを示唆する結論が得られた。この研究に関しては、データの収集は終えており、今年度、論文としてまとめる予定である。その他として、信頼とあいまい性選好の研究などを行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究課題では、老後の備えを阻害する非金銭的な要因について経済実験を通じて検証することを目的としている。2020年度から新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが始まり、本研究課題で必要な経済実験の実施が難しい状況に陥った。その一部については、非接触型のオンライン経済実験により代替したが、何らかのトリートメントが必要な場合はオンライン経済実験による代替が困難であった。それが、本研究課題の進捗状況が「遅れている」理由である。2022年頃から、一部で対面型による経済実験が実施できる状況にあり、その機会を利用して、対面型の経済実験を実施した。

今後の研究の推進方策

今年度の研究に関しては大きく二つの柱がある。一つ目は経済実験が終了した論文に関しては、その分析を行い、それらを論文としてまとめることである。二つ目は経済実験を実施したうえで、論文としてまとめていく研究である。それらのバランスを慎重に鳥ながら、研究を進めていく。一つ目はに関しては、認知的負荷と慎重、節制との関係を明らかにした研究である。この研究に関しては、国内の学会での報告も行っており、国際学術誌の掲載を目指して論文をまとめる段階にある。二つ目はいくつかの経済実験を並行して進めている。例えば、昨年度後半に相対的リスク回避度を文脈から独立した形で検証する経済実験を進めてきた。この研究に関しては、現時点ではサンプルサイズが十分でないため、追加の実験をする必要がある。追加の経済実験が終了してから、速やかに論文をまとめる予定である。いくつかの経済実験を企画しているが、原則として、今年度内に論文化する予定なので、なるべく前半に経済実験の実施をして、後半に論文をまとめるという流れで進めていくようにする。そのために、研究代表者、研究分担者が所属する早稲田大学、関西大学の両方で経済実験を実施していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

本研究課題の遂行には対面型の経済実験が必要になるが、コロナウイルス感染症の影響により、その実施が困難な場合があり、それらを先延ばしにしたため、次年度使用額が生じた。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 信頼があいまい性選好に与える影響:経済実験を通じた検証2023

    • 著者名/発表者名
      尾崎祐介、川村哲也
    • 雑誌名

      大銀協フォーラム研究助成論文集

      巻: 27 ページ: 44-56

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 高次リスク態度・既存研究のレビュー2022

    • 著者名/発表者名
      尾崎祐介
    • 学会等名
      第25回実験社会科学カンファレンス
  • [学会発表] Higher-order risk attitudes under congnitve load2022

    • 著者名/発表者名
      川村哲也
    • 学会等名
      第25回実験社会科学カンファレンス
  • [備考] 尾崎祐介のホームページ

    • URL

      https://sites.google.com/site/osakiyusuke/

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公開日: 2023-12-25  

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