研究課題/領域番号 |
20K20771
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
野村 友和 大阪経済大学, 情報社会学部, 准教授 (30507207)
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研究分担者 |
森 大輔 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 准教授 (40436499)
武田 芳樹 山梨学院大学, 法学部, 教授 (00546327)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 犯罪 / 不正 / 汚職 / 実験 / 立法事実 / EBPM |
研究実績の概要 |
今年度は,昨年度に行った都道府県パネルデータを用いた犯罪発生率の要因分析について,追加的なデータ収集を行い,1976年まで遡って分析期間を拡大し,さまざまな説明変数や操作変数を追加した分析を行った。日本では1990年代後半から2000年代初頭にかけて刑法犯の認知件数が急激に増加し,その後2002年以降は増加時の速度を上回るペースで減少している。この期間における刑法犯の急増に関しては,その要因を明らかにした実証研究はこれまでのところなく,2000年代の警察に対する批判を受けて,警察がより多くの被害届を受け付けるようになったのではないかと言われている。しかし,われわれの分析結果からは,地方警察官数や労働市場の要因では説明されない刑法犯の増加は,1980年頃から継続的に続いており,警察によるマニュピレーションが原因ではないことが示唆される。また,2002年以降の認知件数の減少は,地方警察官の増員や,労働市場の需給の改善,最低賃金の上昇などにより一定程度説明されることが明らかとなった。これらの結果は,論文"Policing, Labor Market, and Crime in Japan: Evidence from Prefectural Panel Data"にまとめ,海外ジャーナルに投稿した。 公職者の不正に焦点を当てた分析については,昨年度に引き続き,警察官や学校教員の処分事案および採用時の倍率などについてのデータを収集し整理した。ただし,データの入手可能性は制限されており,やはり予備的な分析から公職者の不正を観察可能な要因で説明するのは難しいことがわかった。公職者の不正に関しては,実験により発生要因や予防策を明らかにしたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の影響で,対面での打合せおよびラボ実験を実施することが難しかったため,当初の計画より研究は遅れている。実験室実験をオンライン実験に置き換えて実施する予定であったが,準備のための時間が十分に取れず実施に至っていない。また,オンライン実験ではわれわれが明らかにしようとしていることが必ずしもすべて明らかになるわけではないことや,制限の緩和により近く実験室実験が可能になるという見通しから,実験室実験の計画を優先することとした。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,5月に実験室実験やオンライン実験,サーベイ実験などを用いた研究を行っている研究者を招いて「さまざまな実験手法を用いた不正や犯罪の研究 ワークショップ」を開催する。そこで,実験の計画を吟味し,新型コロナウィルス感染症の状況を見ながら秋には実験を実施して論文を執筆したいと考えている。 また,論文を投稿中のジャーナルからのレスポンスを受け取り次第,論文の改訂に取り組み早期の採択を目指したい。また整理済みの警察官や学校教員の処分に関するデータを用いた実証研究にも引き続き論文を執筆したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型コロナウィルス感染症の影響で,打合せや学会報告の大半をオンラインで行ったため,旅費に次年度使用額が生じた。次年度は,新型コロナウィルス感染症の状況を見ながら海外での学会にも参加したい。また,予定していた実験室実験を行うことができなかったため,次年度使用額が生じた。実験は次年度以降に順次実施していく予定である。
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