研究課題/領域番号 |
20K20771
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
野村 友和 大阪経済大学, 情報社会学部, 准教授 (30507207)
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研究分担者 |
森 大輔 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 准教授 (40436499)
武田 芳樹 山梨学院大学, 法学部, 教授 (00546327)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | 汚職 / 不正 / サーベイ実験 / 犯罪 / 警察 / パネル・データ |
研究実績の概要 |
(1) 本年度は当初の実験室で行う予定であった実験を,実施方法を変更してインターネットモニター調査を利用して行った。実験の内容は,公務員のモニターに対して,いくつかの仮想的なシナリオの中からランダムに選ばれた1つを示した上で,同僚の不正を知ったときにそれを通報するかどうかという質問に答えてもらうというものである。われわれが明らかにしたかったことは,一つ目に,目撃した不正が重罪に当たるものである場合と軽微なものである場合とで,通報するかどうかの選択が異なるのかということである。 これは,軽微な不正であっても,不正を咎められないことが,より重大な不正や犯罪へとつながるのであれば,どのような不正であっても通報することが有益だと考えたからである。二つ目は,公益通報者保護制度のように,通報することを促すような制度と,公務員の通報義務のように,不正を目撃しながら通報しなかった場合に処罰されるような制度のいずれが効果的であるかということである。実験結果については現在論文を執筆中である。 (2) 前年度から進めていた,都道府県パネル・データを用いた警察官の増員が犯罪発生率に与えた影響に関する実証分析を論文にまとめて投稿した。日本では,2000年以降継続的に警察官が増員されてきた。同時に犯罪発生率は大幅に低下しているが,警察官数の増加と犯罪の減少との間の因果関係を分析した研究は少なく,2000年以降の警察官の増員という政策に対する科学的な評価は定まっているとは言えない。そこで,われわれは警察官数と犯罪発生率の因果関係を明らかにすることを試みた。操作変数法を用いた分析の結果,警察官の増員は犯罪の減少に対して一定の効果があることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
おもに初年度に取り組んだ都道府県パネル・データを用いた警察官の増員が犯罪発生率に与えた影響に関する論文は,Asian Journal of Criminologyに採択された。投稿してから何度か改訂を行ったため,採択までかなりの時間がかかったため,研究の進捗は遅れている。 また,不正や汚職に関する実験室実験については,新型コロナウィルス感染症の影響もあり未だ実施できていない。代替的にインターネットを用いた実験を行うことも検討したが,実験のためのフレームワークであるO-treeの習得や,サーバーの準備などには想定していた以上のリソースが必要であり,実施には至らなかった。一方で。調査会社に委託してインターネットモニター調査を利用したサーベイ実験を行った結果,このような手法を用いた研究はわれわれの研究目的を達成するための効率的な手段になり得ることもわかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を一年間延長して,本年度は,調査会社に委託して行ったインターネットモニター調査の結果を論文にまとめて投稿する。また,当初から計画していた不正や汚職に関する実験室実験を行う。ただし,われわれの研究目的にはサーベイ実験も有用であることもわかったので,実験室実験とサーベイ実験を併用して行うことも検討している。 実験室や被験者を確保する方法が課題となるが,研究メンバーの勤務校で学生の被験者を募集するととともに,近隣の大学の経済実験施設などを利用させてもらえるよう交渉したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の進捗が遅れたことと新型コロナウィルス感染症の影響により,当初予定していた実験室実験が実施できていない。そのため研究機関を一年間延長し,繰越金については,実験室実験を行うための費用およびインターネットモニター調査を用いたサーベイ実験のための費用に充てる。
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