本研究は子育て支援というワークを「子育て支援労働」と概念定義し、地域で親支援・子ども支援にたずさわる子育て支援者の労働をめぐる社会経済的実態を把握するための、量的・質的把握の方法論を開発することを目的とするものである。2020年度の新型コロナウィルス感染拡大に伴う影響とともに、延期されていたサバティカルが2021年度夏からとなった。コロナ禍による影響の中で、トロント大学グローバル社会政策研究センターの客員教授として、本研究をカナダ(トロント)で進行することとなった。コロナ禍(2020年度)には、指標作成や試験版をもとにした支援現場での調査を実施することが出来なかった一方で、子育て支援者の労働をめぐる社会経済的実態を把握するための量的・質的把握の課題整理、コロナ禍における地域子育て支援現場の状況に関する日本語・英語論文の発表、子育て支援労働を考えるうえでの理論的視座となる「ケアに満ちた民主主義」(Caring Democracy(ケアリング・デモクラシー))の翻訳を監訳者や共著者とともに出版したことが主な研究成果である。ケアに満ちた民主主義社会を支える大きな基盤のひとつが、ケアに満ちた地域社会である。このケアに満ちた地域社会づくりを支えるのが、地域づくりにかかわる人々、地域のボランティア、当事者主体の市民セクターである。子育て支援労働を量的・質的に把握する上でも、子ども・子育て支援制度上の職務だけではなく、コミュニティワークとしての子育て支援、いいかえれば、地域づくりとしてともにケアする(Caring With)ことにコミットする人々の営為を包含する指標と方法論が重要となる。
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