研究実績の概要 |
本年度は、これまでの研究のまとめにあたる書籍の刊行に注力した。日本語とスペイン語で同内容をバイリンガル書籍としてまとめるため、翻訳と編集作業に時間がかかるため、はやめに作業を進めることとした。今年度の研究費のほとんどは、翻訳やスペイン語のネイティブチェックに要する経費、および研究成果の還元とフィードバックを得ることを目的とした、書籍の購入と発送経費にあてられている。 結果的に、代表者、分担者、協力者の全員が執筆し、『ペルーから日本へのデカセギ30年史 Peruanos en Japon, pasado y presente』を2024年2月に刊行した。その内容は、ペルーからのデカセギの最初の拠点となった栃木県真岡市からみたデカセギの変遷、ペルー人の事件史、労働市場の変遷、アソシエーションの変遷、カトリック(とりわけ「奇跡の主」行事)の変遷、在留資格がないペルー人、あるデカセギ者の経験という7章からなる。 この過程で、樋口と小波津ホセは関東社会学会で書籍の内容を報告し、フィードバックを得た。また、書籍が刊行される直前に、コミュニティへの還元のために、三重県伊賀市でシンポジウムを開催した。これは、伊賀という高等教育機関のない地方都市で開催したにもかかわらず、70名の参加をみて参加者の反応もきわめてよく、大きな成功を収めることができた。書籍の刊行とシンポジウムは、複数のスペイン語メディアで取り上げられ、ペルーの日系新聞でも複数回取り上げられるなど、アクションリサーチとしての役割は十分果たしたと考える。
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