研究課題/領域番号 |
20K20786
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研究機関 | 東京福祉大学 |
研究代表者 |
山下 喜代美 東京福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (80438754)
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研究分担者 |
先崎 章 東京福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (20555057)
橋本 由利子 東京福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (30343453)
櫻井 恵美 東京福祉大学, 社会福祉学部, 講師 (50760097)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 安寧支援 / 半構造化インタビュー / 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ / 特別養護老人ホーム / 介護福祉士 |
研究実績の概要 |
研究初年度として、「安寧支援」の概念創出のための因子探索研究を開始した。研究対象者は、①特別養護老人ホーム(以下特養)に6か月以上入所し、残存機能を活用した日常生活支援を受けてる認知症がないかあっても軽度の入居者と、②介護福祉士養成校を卒業して、特養に5年以上勤務した介護福祉士である。調査方法は、半構造化インタビューである。インタビューガイドの作成にあたっては、研究者間で検討を重ね、対象者の答えやすさにも配慮した。この研究計画書は、学内の倫理審査を受けて承認を得た。 新型コロナウイルス禍であるため、感染防止対策の観点から、インタビュー調査はオンラインで行うこととして施設に依頼をかけた。対象者の選定は、意図的サンプリングによって行った。本研究は質的分析により理論生成を目指すものであるため、分析方法は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチとしている。そのため、目的とする回答が得られるようなサンプリングはとても重要である 2021年2月よりインタビュー調査を開始した。3月末までに対象者①6名、対象者②20名のインタビュー調査を実施した。インタビューデータは、文字起こしを行ったのちM-GTA手法に基づく分析を進める予定である。対象者②については「分析テーマ」を検討している段階にある。対象者①については、オンラインによるインタビュー調査であるため、必然的にそれに対応できる特養入居者が対象者となっており意図的サンプリングが機能していない面がある。今後、インタビュー方法の再検討と対象者のサンプリングを見直す必要があると考えている。 特養介護福祉士へのインタビュー調査では、特養で残存機能を活用した介護を提供しながらも、その日、その時、その状況での特養入居者の状態を見極め、身体面のみならずこころの状態をも見越した介護が提供されていることを聞き取ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の発生と感染拡大により、研究開始時期から遅れが生じている。 本研究は、特別養護老人ホーム(以下特養)の入居者及び介護福祉士をインタビュー対象者としての調査が必要であるたため、高齢者施設への感染防止を考慮し、インタビュー調査の方法に検討が必要となった。そして高齢者施設への新型コロナウイルスの持ち込みを避けることを第一優先として、オンラインによるインタビュー調査を行うこととした。しかし特養では、感染防止対策や、それに対応した生活支援の提供等で日常業務がひっ迫しており、インタビュー調査に必要な時間と人員確保の面に課題が生じた。この課題解決のために対象施設と検討を重ね、日程調整を図ることも必要となり、インタビュー開始時期に遅れが生じた。 また特養入居者へのインタビュー調査においては、対象者がオンラインで他者と会話ができることが選定条件にもなり、自立度が比較的高く、日常生活において困難を感じていないような方が選定された。さらにインタビュー中の特養入居者の安全確保と難聴に対する配慮などから特養職員が隣に付き添うことも多く、入居者の本当の思いを引き出せているとは言い難い状況となった。そのため、特養入居者からは研究目的に合致するデータを得られていない状況となっている。現在、入居者へのインタビュー調査方法とサンプリングを再検討している状況である。 現在も新型コロナウイルスは感染拡大状況にあり、特養入居者へのワクチン接種も進んでいない状況である。そのため特養入居者へのインタビュー調査は、さらに遅れが生じる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進捗状況としては遅れが生じているが、基本的には当初の研究計画書に基づいて今後も進めていくこととする。現時点で問題となっているのは、特養入居者へのインタビュー調査である。この問題は2点あり、1点は、オンラインによるインタビューであるため対象者が限定され、必要とするデータに合致する対象者を得られていないことである。2点目は、オンラインインタビューでは特養職員の付き添いが必要となっているため、本人の思いを十分に引き出せていないことである。この2点を解決するために、特養入居者のサンプリングとインタビュー方法を再検討して、必要なデータを収集する。 「安寧支援」の概念創出として、特養介護福祉士のインタビューの20名分のデータをベースデータとして、M-GTA手法に基づいて分析を進める。分析を進める上では、研究者間で「分析テーマの設定」を徹底的に議論してから分析を開始し、さらに理論的サンプリングによるデータ収集も同時進行させ理論的飽和化を目指す。研究の進捗状況は遅れているが、分析テーマの設定は十分に議論するように努める。特養入居者については、前述の問題を解決した後、データ収集を行い分析を行うこととする。 安寧支援の支援内容の具体化については、「安寧支援」に必要な要素を構造化し、さらに具体的な支援内容を示す。このとき、インタビュー調査で得られたデータを見返し、さらに現場に精通した研究協力者の意見も反映させて実践可能な支援内容とする。また、自立支援から安寧支援への切り替えの見極めの考え方やポイントも提示できるように努める。「自立支援から安寧支援へのパラダイムシフト」の理論生成については、「自立支援から安寧支援へのパラダイムシフト」の考え方や具体的な支援方法についての研修会を開催する。この研修会参加者の意見を集約して、それらを反映させた理論を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大状況により、研究に遅れが生じている。インタビュー調査の遅れにより、テープ起こしにかかる費用が予定より少なかった。また、このデータに基づく質的分析を開始できていない状況にあり、データ分析の会議や専門知識の提供を受けておらず、このための経費も使用していない。インタビュー調査やデータの分析は今後も継続していくので、翌年度使用する予定である。 インタビュー調査は、対象施設に訪問して行う計画であったが、感染防止の観点からオンラインによるインタビュ調査となった。それゆえ、旅費の支出が不要となった。しかし特養入居者へのインタビューは、オンラインでは十分な聞き取りができないため、感染状況を考慮しつつ訪問によるインタビュー調査を実施する方向で考えていく。この時今年度使用予定であった旅費を使用する。 次年度は、今年度実施できなかたインタビュー調査と分析をすすめていく。質的分析を多角的に行うために関係者会議を開催し、専門知識の提供の機会をつくる。また学会での発表を行い、さらに広い視点でのディスカッションを実施する。このとき、専門知識の提供、学会発表準備、会議の運用等に関して研究費を使用する予定である。
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