研究課題/領域番号 |
20K20788
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
南 保輔 成城大学, 文芸学部, 教授 (10266207)
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研究分担者 |
岡田 光弘 成城大学, 文芸学部, 非常勤講師 (30619771)
西澤 弘行 常磐大学, 人間科学部, 教授 (50296068)
坂井田 瑠衣 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (90815763)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 触覚 / 観察社会学 / 複合感覚的相互行為 / エスノメソドロジー / 会話分析 / 三人称研究 |
研究実績の概要 |
感覚モダリティが非対称的である人びとの間のインタラクションとして,視覚障害者の歩行訓練場面の研究を中心に進めた。 研究のひとつとして,視覚障害者の白杖を歩行訓練士がつかんで導くという「ガイドされたタッチ」の事例を取り上げた。とくに着目したのは,白杖の3点タッチ法を応用して,縁石の側面をこするように動かしその高さの変化を知るやり方の教示場面である。学習すべき動きが,ことばを使うことなしに呈示されており,晴眼者同士で行われる視覚にたよったお手本呈示との対比が見られた。教示における「デモンストレーション」の新しい類型事例が見いだされた。 2つめとして,反響定位による障害物知覚の事例に着目した。反響定位での障害物知覚ができる視覚障害者がいることを歩行訓練士も知っている。ある歩行訓練日の視覚障害者がこれをどの程度できるかはその都度見極めることになる。この見極めが段階的になされる場面を取り上げて分析した。開けた部分から建物のある部分へと進むのにあわせて,白杖の反響音を利用しての障害物知覚がなされていた。歩行訓練士はそのことに気づいて,どこから建物が始まるかをことばで述べて,反響定位をうながしていた。歩行訓練士本人は反響定位ができないが,それをしている視覚障害者のふるまいからそのことを見てとって,歩行能力査定の一部としているようだった。 これらを通じて,非対称的インタラクションにおける触覚のはたらきと,非対称性の当事者間の説明可能性のありかたについての知見をえることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
6つの研究プロジェクトのうち,「現象学的社会学概念の再定立」は2020年度に論文化にこぎつけた。2021年度は「視覚障害者データ分析」を重点的に進めて国際学会発表に結実した。「薬物依存回復グループワークデータ分析」も学会発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
「視覚障害者データ分析」を中心に進める。コロナ禍のため,遠隔を中心とした研究会を進める。雑誌『Human Studies』特集号への投稿論文の執筆を進めるとともに,デンマークのコペンハーゲン大学主催の国際学会である「第7回マルチモダリティデイ」での研究発表に応募する予定もある。2023年に開催予定の国際語用論学会での研究発表も計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
もともと2020年度には夏休み中に渡米し学会発表をおこなう予定があった。その際に米国各地の研究者仲間との研究会合を行う計画を立てていた。だが,コロナ禍のために海外出張はもとより国内出張もできなくなった。また,ヴィデオカメラなどを購入しての現地調査とデータ収集も計画していたが,こちらもコロナ禍のために実施がかなわず,それに合わせて機材の調達を見合わせた。2021年度に状況が改善されることを期待していたがそれもかなわなかった。2022年度は状況改善を見込んでこれらを進める。
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