研究課題/領域番号 |
20K20804
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
勝二 博亮 茨城大学, 教育学部, 教授 (30302318)
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研究分担者 |
新井 英靖 茨城大学, 教育学部, 教授 (30332547)
田原 敬 茨城大学, 教育学部, 准教授 (70735753)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 教材開発 / 特別支援教育 / 生体機能データ / 教師の力量形成 / 神経教育学 |
研究実績の概要 |
本研究の主たる目的は,視線追跡装置などの生体計測機器を駆使して,通常の行動観察では捉えにくい子どもの実態を明らかにし,その情報を教師にフィードバックすることによる指導改善への効果について検証することにある。生体機能計測には一定時間の接触場面を含むことから,初年度においてはコロナ禍の状況を踏まえ,基礎疾患のない健常児・者を対象とした基礎研究に着手することとした。 まず,4歳から6歳までの健常幼児30名を対象として,身体模倣の見本画像を観察する際の注視パターンを視線探索装置を用いて検討した。その結果,見本画像の人物への注視回数が4歳児群では他の年齢群に比べて少なく,視線定位の密集を示すクラスターの形成数も少なかった。これらの結果から,4歳児では5,6歳児に比べると模倣する人物に対して,視線を細かく定位させて複数の個所に密集した視線定位を形成することが少なく,身体模倣に必要な視覚情報の見落としにつながっていることが明らかとなった。このように身体模倣の正確さには,視線情報の入手過程も関与していることが示唆された。 さらに,情報を読み取る際の認知スタイルの個人差に着目して,健常成人212名を対象とした質問紙調査を実施した。因子分析の結果,情報の読み取りには,従来の言語因子,物体因子,空間因子の3つに加え,空間因子がさらに空間認識因子と方向感覚因子に分かれることが明らかとなった。このように情報を読み取る際の認知スタイルには多様性があり,視線探索方略も認知スタイルの個人差によって異なるものと思われ,その実態を把握することが教材作成には重要であることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の状況のなかで調査及び実験研究の遂行が可能であるか懸念されたが,基礎データの収集を中心として,一定程度研究を進めることができた。試行的に知的障害事例を対象とした視線計測の実施は見送ったものの,研究に協力いただく教員との協議は進めており,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウィルスによる影響が一定程度改善されることを想定していたが,現状においてはあまり楽観的な状況ではない。とりわけ,対象となる知的障害児においては基礎疾患を有する者もいることから,感染対策を十分に行ったうえで,昨年度実施できなかった試行的な計測を進めていければと考える。また,感染状況によっては,対応策の一つとして研究期間の延長もありうると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
多くは研究発表のための学会参加について,現地開催からオンライン開催へ移行したことで,旅費に関わる金額を抑えることができたことによる。次年度には,これらを研究に必要な消耗品,計測や分析等に係る謝金などに充てる予定である。
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