本研究は、東欧における武道の教育力に関するものであり、研究成果として特筆すべきは、日本における武道教育のロジックを整理し、これが東欧におけるユーゴスラビア紛争時の兵士が戦後陥った精神的障害を武道実践により克服した事例と共通性があり、東欧において武道教育が機能することを明らかにした点である。 更に、日本においては武道の精神性に芸道的・求道的精神性と倫理・道徳的精神性の二つがあり、現在はこれが同時に存在すると考えられているが、東欧の本事例においては、修行が進むにつれ前者の精神性に続いて後者の精神性が顕現化するという順序、あるいは芸道的・求道的精神性の内容が深まり進化する過程が明らかになった。 本研究成果は、海外において人間形成を担ってきたキリスト教の文化圏においてさえ武道による人間形成が可能であること、デカルト以来の心身二元論の世界においてもこの武道思想が機能していたことを明らかにした点で、学術的新規性が非常に高い。 本研究の成果を、武道学研究および身体運動文化研究に論文として投稿し、また研究代表者が主催するバイリンガル・ウェブサイト「武道ワールド」において発信した。 本研究により、「武道の教育力」には、“実践を通した精神面の成長”つまり“武道の身体的な修練を通して人として立派な心(精神)を育む”といった「身体→心」のベクトルにみる心身統合的なロジックが根底にあることが立証されたが、これを一般化し、日欧双方の実技実践現場においてセミナーを開催してExample(見本)を明示した
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