研究課題/領域番号 |
20K20810
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮本 昌子 筑波大学, 人間系, 教授 (70412327)
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研究分担者 |
飯村 大智 川崎医療福祉大学, リハビリテーション学部, 助教 (40881842)
越智 景子 東京工科大学, メディア学部, 助教 (20623713)
城本 修 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (00290544)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 吃音 / 早口言語症 / 非流暢性 / LD / ADHD / ASD |
研究実績の概要 |
発話流暢性障害の種類には、主に吃音とクラタリング(早口言語症)がある。学齢期児童の約1~5%が罹患し、言語障害通級指導教室で支援を受けている。近年、この発話流暢性障害とLD(学習障害)、ADHD(注意欠如・多動性障害)、ASD(自閉スペクトラム症)が併存する傾向に注目が集まり、これらの問題の重複が、発話流暢性障害の慢性化や支援の困難さに影響するのではないかという報告が増えている。発話流暢性障害と発達障害の関連性を明らかにすることは、効果的な支援方法の選択を可能にし、発話流暢性障害発症のメカニズム解明に向けた研究の一助となり得る。本研究では、研究目的Ⅰとして非流暢性症状の生起頻度に、どの程度知能の因子が影響するのか、という点を明らかにすること、研究目的Ⅱとして,発話流暢性の問題を主訴に指導・治療を受けている者が、標準化されたLD・ADHD・ASDの各検査において、どの程度、特徴を顕すのかを明らかにすることを設定した。 前年度は、研究目的Ⅰを行った結果、WISC-Ⅳについては発話非流暢性を説明する知能因子が存在しないことが明らかになった。 これまで、発話流暢性の問題は知的な問題と分離して捉えられていたため、知能との関係を明らかにした研究は国内外で少ない。しかし、昨今のLD・ADHD・ASD等との併存例に関する報告の増加から、吃音のある者の認知特性を考慮した支援への必要が迫られていると考える。彼らの非流暢性症状がどのような認知特性に影響されているかを明らかにすることで、支援に向けた具体策を提案できる可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度は、非流暢性と知能因子の関連性の検討することを目的とした。発話流暢性障害を主訴として指導を受ける小学校3年生~6年生の児童30名を対象に、①音正確性スクリーニング検査(SPA)、物語再生課題、音読等を行わせ、吃音中核症状と正常範囲非流暢性の生起頻度を測定し、②WISC-Ⅳを実施し、③非流暢性タイプ別生起頻度を目的変数、諸検査結果を説明変数とし重回帰分析を行った。知能の因子自体は非流暢性の生起を説明しなかった。他の非流暢性を説明する要因について,分析中である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度と来年度(本研究2・3年目)は、発話流暢性障害のある者のLD・ADHD・ASDの特性に関する検討を行う予定である。発話流暢性障害を主訴として指導を受ける小学校3年生~6年生の児童30名を対象に、①音正確性スクリーニング検査(SPA)、物語再生課題、音読等を行わせ、吃音中核症状と正常範囲非流暢性の生起頻度を測定し、② ADHD傾向を予測する質問紙としてConners 3日本語版、ASD傾向については、AQ日本語版自閉症スペクトラム指数、さらにSCASスペンス児童用不安尺度を行う。行動指標の検査としてリズム追従課題とgo/no-go課題を実施する。③①では非流暢性頻度と発話速度を測定、②の結果との相関分析を行う。 LD・ADHD・ASDのある者には、吃音中核症状以外の力みや緊張のみられない症状の生起率が最も高く、言語表出能力がベースの流暢性障害であることが推測される。特に発話速度の上昇はADHD特性を示す質問紙や行動指標課題による成績との相関が高いことが推測される。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた録音用の機器が生産中止になり,別の機器を次年度に購入することになったため。
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