研究課題
発話流暢性障害の種類には、主に吃音とクラタリング(早口言語症)がある。学齢期児童の約1~5%が罹患し、言語障害通級指導教室で支援を受けている。本研究では、研究目的Ⅰとして非流暢性症状の生起頻度に、どの程度知能の因子が影響するのか、という点を明らかにすること、研究目的Ⅱとして,発話流暢性の問題を主訴に指導・治療を受けている者が、標準化されたLD・ADHD・ASDの各検査において、どの程度、特徴を顕すのかを明らかにすることを設定した。今年度は、吃音、早口言語のある者、発達障害のある者、いずれもない者を対象とした発話と言語の調査結果をデータ化する作業を行い、統計的分析を行った。研究目的Ⅰについて,調査結果から2つの仮説と5つの検討内容を得た。仮説①は、早口言語症の傾向が高いほど、速度を下げる課題が困難であること、仮説②は早口言語症の傾向が高いほど、正常範囲非流暢性頻度が高いということである。検討内容(一般化線形モデルによる検討)として、①自由発話の速さ(速い傾向)、音読1回目の発話速度(低い傾向)が非流暢性頻度を説明する有意な説明変数であったこと、②構音の歪み、ディアドコキネシスのエラー、早口言葉のエラーが早口言語症を示す児童の非流暢性頻度の高さを説明する可能性がある(有意傾向)こと、③②の分析を対象者全員において行ったところ、音読速度が非流暢性頻度の高さを説明する可能性がある(有意傾向)こと、④早口言語症の傾向の高さは、構音の歪み、早口言葉の正解率の低さにより有意に説明されたこと、⑤非吃音児は、早口言葉が得意であるほど「正常範囲非流暢が多い」、という結果が得られた。今後はこれらの結果を整理し、再検討を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
前年度までに、発話流暢性障害を主訴として指導を受ける小学校3年生~6年生の児童30名を対象に,音正確性スクリーニング検査(SPA)、物語再生課題、音読等を行わせ、吃音中核症状と正常範囲非流暢性の生起頻度を測定し、分析を行った。今年度は、対照群として発達障害のある児童、吃音と発達障害を重複している児童、吃音と発達障害のみられない児童においても同様に調査を行っており、計画通りである。
発話流暢性障害のある者のLD・ADHD・ASDの特性に関する検討を行う予定である。発話流暢性障害を主訴として指導を 受ける小学校3年生~6年生の児童30名を対象に、 ADHD傾向を予測する質問紙としてConners 3日本語版、ASD傾向については、AQ日本語版自閉症スペクトラム指数、さらにSCASスペンス 児童用不安尺度を行う予定である。行動指標の検査としてリズム追従課題とgo/no-go課題を実施する。加えて非流暢性頻度と発話速度の測定を行う。LD・ADHD・ASDのある者には、吃音中核症状以外の力みや緊張のみられない症状の生起率が最も高く、言語表出能力がベースの流暢性障害であることが推測される。特に発話速度の上昇はADHD特性を示す質問紙や行動指標課題による成績との相関が高いことが推測される。
昨年度はcovid-19の影響で海外での情報収集、研究発表を行わなかったが、今年度はオンサイトでの参加を行い、情報収集と成果発表を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 1件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件)
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