研究課題/領域番号 |
20K20827
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
堀 薫夫 大阪教育大学, 教育学部, 名誉教授 (60173613)
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研究分担者 |
菅原 育子 西武文理大学, サービス経営学部, 准教授 (10509821)
久保田 治助 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (40560719)
荻野 亮吾 佐賀大学, 学校教育学研究科, 准教授 (50609948)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | コミュニティ・エンパワメント / 超高齢社会 / アクション・リサーチ / 評価手法の開発 / エンパワメント評価 |
研究実績の概要 |
本研究は、超高齢社会を迎える各地域において、住民自身が活用可能なコミュニティ・エンパワメントのプログラムと評価方法を開発することを目標とするものである。具体的には、以下の2つの研究を進める。研究1では、地域の生活課題を解決するための地区計画の策定からアクション・グループづくりを進める手法を整理し、住民自身が地域の状況に応じて実施できる形に体系化する。研究2では、コミュニティ・エンパワメントの取り組みによる地域の改善を、住民自身が評価できる指標を開発する。 2年目である2021年度は、研究1のコミュニティ・エンパワメントの手法の体系化について、分担者の荻野が中心となって、領域横断的な研究会を組織し、各領域のエンパワメント手法の体系化を進めた。研究会では、まず農村計画・地域づくりと、都市計画・まちづくり分野の手法の比較を行い、コミュニティ・エンパワメントの「出発点」と「到達点」、外部の専門家・支援者の役割、個人・組織・地域コミュニティいずれのエンパワメントに重点を置くかという論点を挙げた。次に、大学が地域コミュニティに関わるという形でのアクション・リサーチを対象に、研究方法や研究デザイン、研究者の役割、研究の継続性という論点を整理した。 次に、研究2のコミュニティ・エンパワメントの評価手法の開発については、分担者の菅原が中心となり、堀・荻野・久保田との研究会の中で、既存の評価方法について整理を行った。具体的には、個人・組織・コミュニティレベルのエンパワメントの区分けが重要なこと、成果評価型・アクション誘導型評価・エンパワメント評価等という評価方法があること、組織・コミュニティレベルでの評価方法が手薄なことを明らかにした。この整理に基づき、既存の尺度に基づいて、組織・コミュニティレベルの評価項目について調査が実施できるレベルにまで評価方法・尺度の精査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度も新型コロナウイルス感染症の影響もあり、計画上予定していたフィールドでの現地調査が難しかった。このため研究1のコミュニティ・エンパワメントの手法の体系化については、関連領域の介入手法の整理を丁寧に行うことで当初の目的を達成することにした。本年度は関連分野の研究を整理し、論点を抽出することができたため、来年度はこの論点に沿って、活用可能な介入方法を整理する予定である。 研究2のコミュニティ・エンパワメントの評価手法の開発については、先行研究のレビューに基づき、住民主体の評価の実施に向けて組織・コミュニティレベルの質問紙の作成に着手した。これまでのコミュニティ・エンパワメントに関する手法では、個人レベルの評価方法は充実しているが、組織・コミュニティレベルでの評価項目の精査が不十分であったため、その整理において当初想定していたよりも時間を要した。また感染症の影響もあり、実際に評価を行うフィールドについても調整が難航した。このため、研究期間を延長し、2022年度に評価を実施することとした。 以上の状況を総合的に勘案して、本研究は「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、研究1のコミュニティ・エンパワメントの手法の体系化に関しては、2年間に実施した研究レビューに基づき、地域で活用可能な手法を整理したリーフレットの作成を行う。リーフレットの作成時には、研究協力者にも協力を求め、住民が利用しやすい整理の方法を議論し、地域特性が異なる地域で実施する際にどのような情報を入れ込む必要があるかを精査する。 研究2のコミュニティ・エンパワメントの評価手法の開発については、評価方法・尺度のプロット版を完成させた上で、実際のフィールドにて評価を実施し、研究参加者の意見を聴取して、評価方法・尺度の改善を行う。第1のフィールドは千葉県柏市を予定しており、この調査で尺度を改善した後に第2のフィールド(滋賀県近江八幡市、あるいは神奈川県鎌倉市)での評価を再度実施する予定である。 以上の手順を経て、2022年度末までに、住民主体の評価の実施手順をまとめ、地域特性に合わせたモジュールも作成し、住民自身が自らの地域に合わせて評価を実施できる形を整えていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度も感染症の影響で、調査のフィールドに赴くことが全くできず、研究メンバーの打ち合わせも全てオンラインで行った。このため当初多くの金額を計上していた国内旅費を使用することがなく、これにより次年度使用が生じた。また想定よりもフィールドでの調査の時期を遅らせたため、調査実施に関わる経費も持ち越しとなった。 2022年度の使用計画については、まずフィールド調査のための旅費や、調査実施のための経費(質問紙の配布の費用や、インタビュー協力者への謝金など)が想定される。さらに、年度末に地域で活用可能な手法を記載したリーフレットの作成や、3年間の成果報告書の刊行を行う予定であり、この刊行経費も想定している。
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