研究課題/領域番号 |
20K20828
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小川 啓一 神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (90379496)
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研究分担者 |
芦田 明美 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 講師(任期付) (30749164)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 就学前教育 / 教育政策 / ベトナム / ラオス / カンボジア |
研究実績の概要 |
本研究では、ベトナム、ラオス、カンボジアの3カ国を事例に質の高い幼児教育の提供に必須の教育施設(ハードインフラ)と教員(ソフトインフラ)に焦点を当て、定量的・定性的手法の両方を用いた現状分析を実施し、就学前教育施設及び教員の適切な供給・配置に向けた課題を明らかにすることを目的としている。
2020年度は、最新の先行研究や政策関連文書、報告書等のレビューを通して、事例3カ国の公立および私立の就学前教育施設・教員に対する公的財政支出、および教員養成の課程に関して既知の事柄を明確にした。公立の就学前教育の提供施設そのものが十分ではなく、正規の資格を有する教員が不足していることが大きな問題であることを再確認した。また、個々の財源を有する民間による就学前教育の普及が積極的に展開されていることから、民間による就学前教育の存在は看過することができない。しかしながら、実際に民間の就学前教育施設にて教員として勤務しているのは、無資格の教員である場合や適切なインサービストレーニングのない状態で勤務する教員であるケースも散見され、公立・私立問わず、現場で提供される教育の質についての懸念が生じている点も再確認した。
また、事例3カ国における政府の関係省庁が公表している幼児教育・保育の施設数・在籍者数、教員数等に関する2次データを用いて、幼児教育・保育施設へのアクセスの現状、教育施設および教員の供給にかかる公的および私的財政支出の現状に関する定量的分析を実施した。私的支出の状況、民間の施設に在籍するという選択肢の存在が公正なアクセスの保証に及ぼす影響等に関する定量的分析手法を、幼児教育・保育の分野で先進的に応用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度はコロナ禍の状況下で日本人研究者が本研究の事例国であるベトナム、ラオス、カンボジアにて現地調査を実施することができなかったため現地の共同研究者に就学前教育に関する最新の政府関連文献や国際機関の報告書等を入手してもらい、それらの文献のレビューを中心に研究を遂行した。また、政府の関係省庁が公表している幼児教育・保育の施設数・在籍者数、教員数等に関する2次データを用い、事例各国の幼児教育・保育施設へのアクセスの現状、教育施設および教員の供給にかかる公的および私的財政支出の現状に関する定量的分析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、事例各国での現地調査を実施する。コロナ禍で日本人研究者が現地調査を実施することができない場合には、現地の共同研究者に調査を行ってもらう。具体的には、幼児教育・保育を提供する就学前教育施設や勤務する教員、子供を施設に送っている親・保護者を対象としたインタビュー調査を行い、そこから得られた定量的・定性的1次データの分析を行う。この際、先行文献のレビューで明らかになった多様なアクターが運営する施設が調査対象となるよう標本抽出を行う。また、家計調査データ分析で行った分析結果を活用し、幼児教育・保育へのアクセスが確保できていない地域や、民族・宗教等によって周縁化されたグループに属する子供が通う施設、そこで勤務する教員、その親・保護者が調査対象となるよう標本抽出を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度にベトナム、ラオス、カンボジアで現地調査を行う予定であったがコロナ禍の影響により日本人研究者が現地で調査を遂行することができなかった。そのために2020年度の予算を全て執行することができなかった。今年度はコロナ禍が治まり次第、現地調査を遂行する予定である。もし現地調査ができない場合には、事例3カ国の現地共同研究者による調査を計画している。
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