本研究課題では、発達障害や精神障害の感覚過敏などの非定型的な感覚情報処理特性に配慮した感覚に優しい(sensory friendly)社会生活環境の普及を目的とする。近年、欧米では、感覚過敏など発達障害の感覚特性に配慮して騒音や照明をやわらげた、感覚に優しい(sensory friendly)社会生活空間の普及が進んでおり、自治体をあげての取組もみられるが、日本ではこのような取組は進んでいない。本研究課題では、感覚の問題を抱える発達障害や精神障害をもつ人が社会生活環境でどのような困難さを抱え、どのような配慮にニーズを求めているかを明らかにし、実際の社会生活環境への配慮に応用していく。 これまでに研究協力者らとともに、徳島県立近代美術館において、感覚過敏や発達障害をもつ子どもやその家族が美術館にアクセスしやすい取組について、当事者やその家族からヒアリングを行い、ホームページ上の動画の作成や施設内マップなどの作成にいたった。高知県内においては、高知県の発達障害の当事者団体や行政と協力し、音や照明に配慮した感覚に優しい映画上映会を3回行い、当事者や家族から好評を得ることができた。そして、高知県立足摺水族館では、県の障害福祉課と連携し、地域の当事者からヒアリングを行い、発達障害の感覚の問題への配慮について水族館スタッフに研修を行ったうえで、音や照明に配慮した感覚に優しい取組を行い、館内の感覚刺激に関する情報をわかりやすく示したセンサリー・マップも作成し、当事者や家族、および一般の利用者からも好評を得ることができた。さらに、発達障害における感覚の問題およびその支援の方法に関して、支援者や一般市民の理解が深められるよう、和文総説を執筆し国内の学会等で発表した。
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