2020年度は、日本の特別支援教育に関する基本データをもとに、その変化の数理モデル開発に着手した。特別教育(日本の特別支援教育)対象者の数などの基本データをもとに変化様態の数理モデル化を開始した。具体的には、Inflow rate、つまり通常学校から特別学校への「流入数」が全体の児童生徒数に占める割合を指標にして、その数理モデルの開発を試行した。この指標を用いることの優れた点は、これまで「一般的に学齢人口の減少傾向があるのに対して特別支援教育の対象者が増加している」というおおまかな傾向しか表現できなかったことに対して、全体の児童生徒数に対する比率として表現することで、特別支援教育の対象者が「どの程度増減しているのか」を指標として表現できる点にある。この表現方法であれば、特別教育の国際比較をする際に、児童生徒数の増減傾向が異なる国の間での比較をより正確に行うことができるようになる。また、現在の検討点は、「流入」に与える影響変数として、影響係数の大きいものとして「新しい障害種の対象化」、「特別支援教育制度の変更」を、また、並行変数として「Inflow rateに対する特別支援学校設置数・支援学級数の変化」、「通級指導対象者数の変化」である。これらについて数理モデルに組み込むと、従来よりも動的に変化を明らかにできるはずであり、その係数の決定のための原理を明らかにする作業を進めている。各変数に関して、変化の基本数理モデルの作成の試行も繰り返した。現時点ではまだモデルの収束ができておらず、変数を入れ替えるなど検討を重ねているところである。
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