研究課題/領域番号 |
20K20855
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研究機関 | 国立教育政策研究所 |
研究代表者 |
千々布 敏弥 国立教育政策研究所, 研究企画開発部教育研究情報推進室, 総括研究官 (10258329)
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研究分担者 |
倉本 哲男 横浜国立大学, 大学院教育学研究科, 教授 (30404114)
田村 知子 大阪教育大学, 連合教職実践研究科, 教授 (90435107)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 授業研究 / 校内研究 / 組織文化 / 組織開発 / 指導主事 |
研究実績の概要 |
本研究は、学校がカリキュラム・マネジメントを実施することを通じて校内にプロフェッショナル・キャピタルを構築するメカニズムを解明することを目的としている。初年度は各メンバーが関わる学校におけるカリキュラム・マネジメント事例を調査していくこととしていたが、コロナ禍により学校訪問ができなかった。そのため、先行研究分析に焦点をあてて作業を行った。 カリキュラム・マネジメントはカリキュラム構築を主目的とするもの、学校経営改善を主目的とするものに大別できる。前者はカリキュラム論や教育方法学を基盤とし、後者は学校経営学を基盤としている。本研究は多様に構築されているカリキュラム・マネジメント論をプロフェッショナル・キャピタルの特にディシジョナル・キャピタルに注目して分類していく。バン・マネンの省察論を基盤に学校の主体性と省察の深さを問題にしていくと、汎用的原則を技術的に応用することを意図する省察(技術的省察)、固有の文脈に即して実践的な判断と行動をとる実践的省察、一貫した教育目標や価値の構築を意図している批判的省察という視点でカリキュラム・マネジメントの事例を分析すると、表面的には異なるカリキュラム・マネジメントを行っていても浅い技術的省察に留まる事例や深い批判的省察を行っている事例が明確になる。 プロフェッショナル・キャピタルが構築されている姿とは、教師集団の主体性と省察の深さ、社会的紐帯の深さ、個々の教師の力量向上が相互に絡み合う状況である。そのような学校の事例発掘を、次年度以降に実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、学校がカリキュラム・マネジメントを実施することを通じて校内にプロフェッショナル・キャピタルを構築するメカニズムを解明することを目的としている。初年度は各メンバーが関わる学校におけるカリキュラム・マネジメント事例を調査していくこととしていたが、コロナ禍により学校訪問ができなかった。そのため、先行研究分析に焦点をあてて作業を行った。 プロフェッショナル・キャピタルに関する先行研究分析より、バン・マネンによる省察の三段階論を得たことは大きな成果であった。この枠組みにより事例校の分析の視点が深まることと予想している。 事例校の分析枠組みは、当初はカリキュラム・マネジメントのパターンに応じて構築することとしていたが、初年度の検討を受け、省察の深さの視点を加味した枠組みを構築することとしたい。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の先行研究分析を通じ、メンバーを含めたカリキュラム・マネジメント論の全体状況が明らかになった。 次年度は事例を基に考察を深めていくが、その枠組みを構築する上で、プロフェッショナル・キャピタルの三視点-人的資本、社会関係資本、意思決定資本に加え、バンマネンによる省察の三段階、教師及び教師集団の主体性(エージェンシー)などの視点が重要と考えている。 省察及びエージェンシーの視点は、学校のカリキュラム構築に大きな影響を与える教育行政の在り方も視野に入る。教育行政に関する先行研究においては、教育委員会の指導助言が学校の教育課程編成を阻害する可能性を指摘しているものがある。一方で代表者千々布がこれまで実施した諸調査は、教育委員会の指導が学校の組織文化や指導力向上にプラスに働く可能性を指摘している。どのような指導助言が学校のカリキュラム・マネジメントにマイナスに作用するのか、本研究の考察が一定の示唆を与えるはずである。 そのために、事例校の選定はカリキュラム・マネジメントのパターンだけでなく、教育委員会の指導体制も考慮して選定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍を受けた所属機関の方針により、メンバーの対面会議と事例校訪問を行うことができなかった。 次年度は初年度に予定していた分を含めた事例校調査を実施することとしている。
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