研究課題/領域番号 |
20K20856
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研究機関 | 国立教育政策研究所 |
研究代表者 |
吉岡 亮衛 国立教育政策研究所, その他部局等, 客員研究員 (40200951)
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研究分担者 |
江草 由佳 国立教育政策研究所, 研究企画開発部教育研究情報推進室, 総括研究官 (60413902)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 科学教育 / 理科教育 / 理科の好き嫌い / 社会情動的スキル / 非認知スキル |
研究実績の概要 |
本研究は子どもたちをもっと理科好きにさせるためにはどうすればよいかについての議論を高めるために、社会情動的スキルの働きに着目して研究を行うことにしている。 ひとつは、PISA2015(OECD生徒の学習到達度調査)の科学的リテラシーの結果について検討を行なった。PISA2015では、科学リテラシーの一部としての科学の価値観と認識論的信念、内発的動機付け、興味・関心、外発的動機付け、自己効力感の5つの社会情動的スキルと科学の成績との関係が分析されており、我が国はいずれの指標においてもOECD平均よりは低いという結果が報告されている。国内で行なわれる大規模学力調査には他にも全国学力・学習状況調査やIEA国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)がある。PISAと同様にこれらの調査においても質問調査が実施される。それら質問調査の質問を整理分析した結果、それらの調査においても理科の楽しさ、自己効力感、動機付け3つの社会情動的スキルに関する質問が行なわれていることが分かった。今後は、これらの調査における社会情動的スキルと成績との関係を分析できるかについて検討を進めたいと考えている。 他方、心理学の分野における社会情動的スキルの研究については文献研究を中心に研究を進めた。具体的には社会情動的スキルを扱う文献を網羅的に収集し、そこで扱われている尺度について比較検討を行った。実際に児童・生徒を対象とした調査では、調査項目は量的な面においてはできるだけ整理し、文章は平易である必要がある。そのため、今後は収集した尺度の中から、理科の好き嫌いの評価に特化した尺度を構成する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初はPISA調査の科学的リテラシーの結果に基づいて調査問題の枠組みを設計する計画であったが、全国学力・学習状況調査とIEA国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の質問調査の中にも社会情動的スキルに関係する設問が入っていることが分かったため調査問題のアイテムを豊かにすることができた。他方心理学的な尺度に関してはコロナの影響によりアメリカで開催される学会へ参加が不可能となったため最新の情報収集はできなかった。その分は過去の文献から補うこととして、そのための文献収集に努めた。現在は論文で使用されている尺度の整理を行っているところで、該当文献の約半分程度の文献については検討を終了した段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究計画として、6月いっぱいを目処に、文献研究から得られた尺度を使った調査問題を作成する。具体的には、(1)既存の研究報告の中から社会情動的スキルの測定に使用された尺度を網羅的に抽出する。(2)抽出した尺度を構成する要素 (一つ一つの問いに当たるもの) に分解し、好きと嫌いに関係するものを収集する。(3)新たな尺度を構成し調査問題を作成する。また、将来の職業選択の意志を調査するために、(4)幸福感を調査する尺度を問題に加える。子供たちの理科の好き嫌いと理工系の 職業選択の意志を浮き彫りにするための調査に必要な調査用紙を開発する。作成した調査問題については7~8月に科学教育と教育心理学の専門家から専門的な意見を聴取して検討を行い問題の改良を行う。9~10月に小学3年生から高校3年生まで、各学年100名程度の児童生徒を対象とした調査を実施し、10月以降収集されたデータは電子化し、匿名化してコンピュータで統計処理を行う。分析にはSPSSを用いた多変量解析を行って、理科の好き嫌いと社会情動的スキルとの関係を明らかにすることを試みる。また、理科好きを増やす方策について文献を収集・検討して提言をまとめることとしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実質的な研究期間が7月から3月までの9カ月間と短かったこと、コロナの影響によりアメリカで開催される学会への参加及び国内の学会への参加が叶わなかったことに加え、調査のための出張を自粛しそのため調査準備等も行えなかったために未使用額が積み上がった。次年度にコロナが納まれば前年度に計画したアメリカの学会への参加や国内関係学会へ出席等も行い活発に研究活動を行う計画である。また、調査についてはローカルな調査を予定していたが、インターネットを利用した全国的な調査を実施することも計画に加えることにする。
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