ロボット工学者の吉川(分担研究者)らが開発したヒト型ロボットであるCommUは、複数体のロボットと人間との集団コミュニケーションを研究するためのプラットフォームである。複数の聞き手ロボットが同時に反応を提示することにより、その場を共有する人に存在感や一体感を実感させ、円滑なコミュニケーションを支援するシステムとなっている。豊富な自由度を基にそれぞれのCommUは多彩な表現を呈することができる。本年度は自閉スペクトラム症や、うつ病患者が通院する精神科病院デイケアにて参加者の方に複数ロボットシステムを体験していただいた。普段はデイケアスタッフに自己開示をためらい、患者様同士のコミュニケーションに回避傾向のある患者様が複数体ロボットシステムに対しては前向きにコミュニケーションし、自己開示した。また実験中に参加者だけでなく、他のデイケア利用者もその様子を観察し、実験終了後も互いに自己開示し合っている様子を認めた。複数体ロボットシステムのメリットの一つとして、対話相手が会話に詰まった際に会話していない別のロボットがフォローし会話継続を促すことが期待されたが本研究でも見ることができた。一方で会話は継続するものの、会話内容が時間の経過とともに深まっていないことは課題となった。今後はそれぞれのロボットが、個性を持ち、他者も含めた過去の会話内容を蓄積することで、会話の継続と共に進化が期待できる。また会話内容の進化に伴いノンバーバルの表現を変化させることも重要と考えている。
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