研究課題/領域番号 |
20K20862
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小川 正晃 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (00716186)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | ニューロモジュレーター |
研究実績の概要 |
ヒトは常日頃、仕事、勉学、スポーツなど、現状よりも高い目標を設定する。思った通りにいかない「期待外れ」の場合にも、それをそのまま受入れて目標を諦めるよりは、むしろそれを乗り越えようとすることで将来の成功に繋げる。この心理が不足すると社会的に成功できず、挫折を味わった後の抑うつなどの問題につながる。動物社会においても、大抵の場合すぐには成功しない採餌などの行動において、期待外れを乗り越えられなければ種の存続に影響する。このように普遍的かつ重要な機能であるにも関わらず、「期待外れを乗り越える」心理を担う神経メカニズムの解明は進んでいない。ドパミン、アセチルコリンなどのニューロモジュレーターは、グルタミン酸などによる早い神経伝達を修飾し、それぞれ、意欲、注意を制御していると考えられている。しかし、これらのモジュレーターが、期待外れを乗り越える心理に果たす役割は解明されていない。本研究は、報酬の期待外れを乗り越える心理を強く誘導するラット行動モデルにミリ秒単位のモジュレーター特異的な計測技術と活動操作技術を導入し、その心理を制御するドパミン、アセチルコリンなどの役割を探索する。 本年度は、ドパミン、アセチルコリンなどのニューロモジュレーターの濃度をサブ秒単位で計測する技術を導入し、不確実な報酬に関する期待外れを乗り越えるラット行動モデルにおけるそれらの動態の計測を開始した。その結果、報酬の期待外れが生じる瞬間にぞれぞれのモジュレーターの濃度が上昇する脳領域を新たに見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定どおり、ドパミン、アセチルコリンなどのニューロモジュレーターの量をサブ秒単位で計測する技術を導入し、行動中ラットからその動態を計測することに成功している。また、期待外れの際にそれらの量が上昇する脳領域を見出しているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後、ドパミン、アセチルコリンなどのニューロモジュレーター量の計測を進める。また、期待外れの際にそれらの量が上昇する脳領域への投射神経回路が、期待外れを乗り越える心理に果たす因果的役割を検討する。また、さらに、これらのニューロモジュレーター量をより高空間解像度で計測するための技術開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた技術による、ドパミン、アセチルコリンなどのニューロモジュレーター量の計測が当初の予定以上に順調に進んだため、現在用いている方法よりもより高空間解像度で活動量を計測するための技術開発を行う予定である。そのために必要な機器の購入費に充てることを予定している。
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