研究課題/領域番号 |
20K20863
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野村 理朗 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (60399011)
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研究分担者 |
田中 美吏 武庫川女子大学, 健康・スポーツ科学部, 准教授 (70548445)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 無心 / 伝統 / 身体技法 / 先端技術 / 競技 |
研究実績の概要 |
哲学,宗教学等の研究領域を惹きつけてやまない「無心」は大きな可能性を秘める。その科学的課題は未検討だが,周縁的な概念、すなわち心理学のマインドフルネス,脳科学のデフォルトモードネットワーク,スポーツ科学のゾーン体験,呼吸法等に関わる機能・構造の解明を目標として、当該年度は以下の課題をデザインし、実験・調査法により成果を得た。その概要は以下のとおりである。 1.無心の構成要素をなすと考えられる「曖昧性への態度」を測定する心理尺度を開発した。また芸術作品は詩歌に内包される審美性について、とくに季語をおりこみ自然等を題材とした俳句に着眼して検討した。結果,俳句に内包される感情価に応じて、その審美性の知覚が異なることなどが明らかとなった。 2.人工物と「無心」の関連: 先端技術を実装したヒューマノイド等のロボットが日常生活に浸透しつつあり、対する認識ならびにロボットとユーザの関係構築について「無心」の観点から検討した。結果、マインドフルネス傾向が、ロボットへの抵抗感等を軽減するメカニズムが示された。 3.身体技法が心的状態に与える効果について、姿勢の影響に着眼し、自律神経系を指標としつつ、予備的検討を重ねるなかで、仮説・探索的に検討してきた影響因子を特定した。 4.スポーツにおける競争下でのパフォーマンスの向上や低下に関するメカニズムについて、共行為者での伝染現象という新奇な視座からエビデンスを蓄積する萌芽研究に取り組み始めた。2020年度はこのテーマに関する第1実験として、競争下における共行為者間でのパフォーマンスの伝染現象を明らかにする実験を行った。そして、非競争下に比べて競争下では共行為者の成功が伝染する者と失敗が伝染する者の個人差が生じることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際学術雑誌においては、Psychology等への採択・掲載、各種学会シンポジウムの開催などを通じて「無心」に関わる研究を推進した。
上記の研究成果(1~4)に示すとおり、無心にかかわる実験・調査研究の成果を発信している。また、コロナウイルスの感染拡大状況を受けて、実験室実験の実施を断念せねばならない状況が一定期間あったものの、そこにおいてはウェブ上での調査や実験へと調整するなど、とりうる手法を駆使して研究展開した。
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今後の研究の推進方策 |
以下の研究課題を継続、発展させる。 研究目的1:「無心」の実現:競技パフォーマンスの定量・定性的評価 2020年度に実施した実験結果の解析、考察を行うとともに、2021年度に実施予定の実験において2020年度に得られた実験結果の原因を明らかにしていく。とくに運動イメージについて定量化を行い,その関与を調べることが可能になる.そして,本研究課題の「無心の認知科学」に対しては,「無意識的 (無心)/意識的 (有心)/」模倣の視座から考察。並行して交感・副交感神経指標(心拍数やRR間隔周波数)を計測し,変数間の関係性を解析する。 研究目的2:「無心」の実現: 介入効果および制約条件について心理・神経科学的基盤の両者の観点から、一般・競技者(初心者・熟達者)等を対象に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの感染拡大状況を受け、実施予定の実験室実験を延期せざるをえない期間があったため。
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