ストレス社会と言われる現代社会において、例えば過度の競争を強いられるなど、外界からの心理的な刺激(ストレッサー)に起因する疾病が社会問題となっている。そのため、心拍数・呼吸数などの生理的反応からストレスホルモンなどの生理活性物質に至るまで、ヒトの心理状態を評価するための指標が数多く検討されてきた。一方、ヒト以外の動物において生理反応を知るためには接触式の機器を装着することが必要であり、特に野外動物や機器の装着が難しい飼育下動物の生理反応に関する知見は比較的乏しい状況である。 本研究は、チンパンジーの心拍数および呼吸数(バイタル情報)を遠隔から非侵襲的に測定することによって、生理活性物質の測定や自己指向性行動などの従来のストレス指標だけでは検証できない、チンパンジーの社会におけるストレッサーを明らかにすることを目的としてきた。本研究では、新型コロナウィルスの世界的流行でチンパンジーの計測が思うように実現できないなか、まず屋外で飼育されているウマの呼吸数をミリ波レーダを用いて非接触で計測した。四足で立っている状態の動物の呼吸数を遠隔から計測できたことは世界初の成果である。本研究成果はJournal of Veterinary Medical Scienceに掲載された。また、飼育下のチンパンジーの心拍数をミリ波レーダを用いて非接触で計測することに成功した。その成果を投稿論文としてまとめている。本研究成果は、非ヒト霊長類において世界で初めて遠隔から心拍数を計測することができたものとなる。
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