研究課題
本研究が想定する最終目標は、データ駆動型とエキスパート型の人工知能技術を組み合わせることで、心理療法内外のあらゆる“意味のある”情報をセンシング し、ビッグデータを取得し、解析可能とするデータ知識循環を実現することにある。昨年度に引き続き、本年度も、うつ病や不安症に対する認知行動療法の統一プロトコル(UP)の構造化知識の構築を推し進めた。具体的には、UPに含まれる8つのモジュールの全てについて手続き知識と目的志向の知識の構造化を進めた。ただし、前者の手続き知識の明細化に時間を要し、後者の目的志向の構造化知識の構築は一部に留まった。また、UPにおける暗黙知を明示化するために、認知行動療法センターで実施されているUPのスーパービジョン(臨床指導)における議論を質問と回答のQA形式で書き出し、それを構造化知識に追加するとともに、データベースとして集積し続けた。直感的な検索を可能とする特殊な自然言語処理技術により構築されたシステム上に、それまで集積したQAに搭載させ、臨床訓練での利用可能性を検討した。また、構造化知識にリンク可能なセンシングデータについても検討を進めた。昨年度に続き、骨伝導コミュニケーターと生体センシングセンサーのハイブリッドウエアラブル機器の適用可能性を検討した。このウエアラブル機器は、ヘッドホンのように頭部に装着し、ハンズフリーに6つの生体情報(血中酸素飽和度、灌流指標、体温、呼吸数、脈拍数、リラックス度)をリアルタイムで計測することができる。このデバイスを用いて、UPにおける内部感覚エクスポージャーの試行や、心理療法を模した対話場面での試行を行った。また、マルチモーダルなセンシングが可能となるように、認知行動療法ラボにおいてコンピュータビジョンに関連する機器の設置の検討を進めた。
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