研究実績の概要 |
研究代表者は昨年度ランダムテンソルの分野で以下の研究を行いプレプリントを作成した. 1つ目のプレプリントは「B. Collins, R. Gurau, L. Lionni: The tensor Harish-Chandra-Itzykson-Zuber integral I: Weingarten calculus and a generalization of monotone Hurwitz numbers, (arXiv:2010.13661.)」である. このプレプリントでは, Harish-Chandra-Itzykson-Zuber積分をテンソルの設定まで拡張する研究を行なった. そのために, テンソル版Weingarten解析の基礎を作り, Weingarten関数に関する多くの結果をテンソルの状況で再導出し, 一般化した. この論文は3つのパートからなるプロジェクトの1つ目の論文である. この論文の続きである2番目の論文では, ランダムテンソルのサイズ極限における漸近解析と量子情報理論との関係を進めており, 90%ほど完了している. 3番目の論文では一般化されたR-変換と呼ばれる自由確率論におけるフーリエ変換の対応物の理論をテンソルの設定で研究を進めている. これも半分程度進んでいる. 他の方向としてB. Collins, T. Hayase: Asymptotic Freeness of Layerwise Jacobians Caused by Invariance of Multilayer Perceptron: The Haar Orthogonal Case, (arXiv:2103.13466.)を作成した. これはランダムテンソルを介してニューラルネットワークに自由確率論を応用するための論文である. multilayer perceptronsにおけるlayerwise Jacobianの漸近的自由独立性を証明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ランダムテンソルに関する3つのパートからなるプロジェクトを共同で行っているLuca Lionni氏とRazvan Gurau氏とを招聘し対面で研究を加速的に推進したいと考えていたが, 昨年度は京都大学へ招聘が叶わず研究に遅れが生じた. 特に, Luca Lionni氏は京都と沖縄のOISTへの訪問を準備していましたが, 直前にコロナウイルスのためにキャンセルしなければならなかった. 同様のことがIon Nechitaを中心としたフランスの別の研究者チームとの共同研究でも起きた(日本の早瀬友裕氏(富士通研)との共同研究の部分のみ遂行). 今後招聘を早く再開したいと考えている. 現時点ではe-mailやzoomを介して共同研究打ち合わせを継続しているが, そのペースは当初期待していたよりも遅いものとなっている.
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今後の研究の推進方策 |
まず第一に, Luca Lionni氏とRazvan Gurau氏と進めている「ランダムテンソル及びランダムテンソルを用いた量子情報理論におけるエンタングルメントの新しい枠組みでの研究」についての2番目の論文完成させる. また, ランダムガウステンソルで一般化された特異値の最大値を見積もる問題について, C.Bordenave氏(エクス-マルセイユ大), D. Chafai氏(パリ・ドーフィン大), P. Youssef氏(ニューヨーク大アブダビ校)と共同研究を進めていく. コロナ禍であるのでe-mailやzoomを介して共同研究打ち合わせを継続し, 状況が改善次第すぐに共同研究者を招聘できるように継続して密に連絡を取る.
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