研究実績の概要 |
本研究課題はモーメントの計算で強力な計算手法を提供するWeingarten解析などのランダム行列の研究で深めた技法をテンソルの設定で考え, より高次のテンソルに値を取るランダムテンソルの極限定理などの確率論的な研究を行うこと, 及び, それらをランダムグラフ, 量子情報理論, 機械学習へ応用することを目標としている。 令和3年度は研究代表者とJianfeng Yao氏, Wangjun Yuan氏でランク1の独立なn次元ベクトルのk階テンソル積の和の固有値分布についての研究を進めた。従来の結果ではkの増加をo(n)と仮定したもとではランダム行列における標本共分散行列のスペクトル分布の極限分布として現れるMarcenko-Pastur分布と呼ばれるよく知られた確率分布への収束を示すような結果であった。今回の研究では, 量子情報理論からの動機で, その仮定であるkの増加をO(n)とより早い増加で考えた。 このケースの場合ではその行列モーメントがMarcenko-Pastur分布以外の分布のモーメントへ収束することが起こることを発見し, それを示した。 また既知のMarcenko-Pastur分布へ収束するようなケースはkの増加がo(n)であることが必要十分であることも示した。この研究結果をプレプリント「On spectral distribution of sample covariance matrices from large dimensional and large k-fold tensor products」(arXiv:2112.05995 )としてまとめ数学の専門誌へ投稿した。これに引き続き, Wangjun Yuan氏とはさらに発展的な結果を出すべく共同研究を継続し, このランダムテンソルの研究を測度集中の結果など用い、深めていく方向で議論を継続している。
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