研究課題/領域番号 |
20K20883
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
降籏 大介 大阪大学, サイバーメディアセンター, 教授 (80242014)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | 離散部分積分公式 / 構造保存数値解法 / 差分法 / 対数差分 |
研究実績の概要 |
2022年度研究計画においては主に研究計画のステップ2からステップ4において想定していた過程計画を基に各分野の専門家と協働も含めたアプローチを行った. まず,本研究の本質的内容である構造保存を実現するために要請される離散的数学的性質についての研究に基づき,ステップ2にかけての研究の継続として基底空間離散化とその上での微分作用素の離散化への要請について基底空間の一般凸多角形分割と定数関数空間上での離散ベクトル解析の数学的な整理について研究を推進した. ステップ3としては既存の構造保存数値解法高速化手法について非線形性が多項式である場合の多段階化法との整合性を調べ適用可能であることを見出していたが,この離散化が変分構造を数学的に維持していることによるものであり数学的な自然な拡張であることを利用して高速化スキームの安定性について関数解析による解析を進めた. またステップ4として,新しい構造保存数値解法の数学的性質の解析に着手した.その課程において,より優れた離散化手法として近似誤差形状を制御可能な対数差分演算子を新たに構成していた.これは安定性等の側面で優れた性質をもつと期待してたがが,積型誤差混入に対する抵抗性などの新たな数学的性質も発見されるに至った.これらの成果は第27回計算工学講演会,ワークショップ「High-index saddle の探索アルゴリズムとその応用」などの研究集会・学会にて講演発表し,専門家と最新の知見を共有した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の計画において,当該年度の研究は第2から第4ステップまでの範囲であったが,これらの計画に沿って十全に研究を推進することが出来た. また,前年度に引き続き,非線形ながら近似誤差プロファイルを制御可能な新しい差分演算子の解析,その新しい数学的性質の発見,構成に至る成果に関する研究を本研究のフレームワークと連携させて進展させている.これは本研究の目的である離散部分積分公式の研究にも寄与しつつ他場面への適用も強く期待できる成果でありることから,当初計画として十分に満足な成果であると判断するものである.
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今後の研究の推進方策 |
現状は研究計画にあったステップ2からステップ4に至る過程を順調に遂行した上に計画にない新たな成果も並行して進展させている状況であることから,方向性としては正しいと判断し,引き続き大きく分けて以下の複数の方向性へその可能性を探索しながら研究を遂行してゆく方策が良いと考える. その一つ目は研究計画に記載したステップ3からステップ4へと進展することに相当する方向性で,これまでに一定の成果確立をみた凸多角形分割における差分作用素に基づく構造保存数値解法の構成である.これは研究計画書の目的の項にも記したようにこの成果が得られれば理学,工学,社会,医療問題等の幅広い分野での実際の応用があり重要性の高い方向性である.この方向性の研究に関しては東京大学の松尾教授,大阪大学の宮武准教授とのこれまでの共同研究を継続することで進展を強く期待できると考えている. 二つ目の方向性は前年度までに得た新しい成果である非線形差分作用素の本研究への適用可能性を検討するというものである.この差分作用素は非線形のために計算量は増加するが,導入された自由パラメータにより近似誤差プロファイルを制御可能であるという大変優れた数学的性質をもつことから,波動型偏微分方程式をはじめ多くの問題に対して大変に有用であると期待できる.さらに,積型誤差混入に対する抵抗性を持つことも発見された.この特徴を取り込む形で構造保存数値解法が構成できればこれは実用上大変に優れた数値計算法となる可能性があるためこの方向性を探索することは本研究において大変に重要であると考える.
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次年度使用額が生じた理由 |
理論的進捗に集中していたことと,コロナ禍のために前年度までの期間を通じて国内出張,国外出張が不可能となったために多くを出張費として予算計画していた本年度予算に数年分の累積的な繰越が発生しこれにより次年度使用額が生じた. 2022年度半ばよりこの状況が改善されつつあり,2023年8月に行われる国際学会 ICIAM2023 に参加するとともに,サテライト的に本研究内容に関する国内外の構造保存数値解研究者を招待しての研究集会等開催を検討しており,これらの出張費および謝金等として予算使用が進むものと考えている.
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