研究実績の概要 |
本研究の2023年度における計画およびその実施として,前年度(2022年度)に引き続き,研究計画に記した主にステップ3およびステップ4において想定していた過程計画を基に各分野の専門家と協働も含めて研究を推進した. 計画のステップ3においては「既存の構造保存数値解法高速化手法と前年度までの計画ステップ2において得られた構造保存数値解法と融合をはかる」をテーマとして,構造保存数値解法の既存の高速化手法に対し非線形性項が多項式であるならば多段階化法と整合し適用可能であることを見出しており,この離散化が変分構造を数学的に維持していることによるものであり数学的な自然な拡張であることを利用して高速化スキームの安定性について関数解析による解析を進め,多段階化の段数が不安定性に与える影響を見出した.なお上記のステップ2では「数学的構造を持つ微分方程式問題に対し,離散部分積分公式群によって任意凸多角形格子上の構造保存数値解法を構成する」をテーマとして前年度まで研究を推進している. そしてステップ4では「計画ステップ 2,3 で構成した新しい構造保存数値解法,特にその数値解が持つと期待される数学的な性質の解析を推進」をテーマとし,新しい構造保存数値解法の数学的性質の解析の進展にとりかかり大変興味深い離散化手法として近似誤差形状を制御可能な対数差分演算子を新たに構成しており,その調査・解析を進めた.この演算子は安定性等の側面で優れた性質をもつだけでなく,観測ノイズ等を想定した積型の誤差混入に対して強い頑健性を示しており,多くの特徴を持つことが明らかになりつつある.これらの成果はこれまでのように学会・研究集会等で講演発表をし,数値解析分野における他研究者と知見の共有をすすめており,一定の成果が確定した時点で論文出版する予定である.
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