研究実績の概要 |
本研究は, 研究協力者の丹田聡(北大), 中津川啓治(北大)と共に「時間作用素」の存在の実験的検証と理論的研究を行うものであった. 以下で実験と理論に分けて令和2年度の研究実績を報告する。
(実験に関する実績)Hを系のハミルトニアンとするとき, 弱ワイル関係を満たすペア(H,T)が存在すれば, Tを強時間作用素という. 本研究では純粋数学として始まった時間作用素の研究が, 物理実験のエキスパートの目にとまり, その存在を実験で確かめようという物であった. 数学と実験が奇跡的に融合した極めて挑戦的な研究であり, 時間作用素の存在の傍証をなんとか検証してW・パウリ以来思考停止になっていた「時間」について一石を投じる計画であった. しかしながら, コロナ禍(covid19)の影響で当初計画していた6回の北大での研究打ち合わせのうち5回がキャンセルになってしまった. また, 残念なことに, 九州大学IMIで開催予定であった時間作用素に関する国際研究集会も直前で2021年度以降に延期になってしまった. ただし1回の北大での研究打ち合わせは有意義で2021年度以降の実験計画を, 北大の丹田研の学生も交えて, 立てることができた.
(理論に関する実績)調和振動子の時間作用素は物理の世界では形式的に知られているが, これを厳密に証明し, さらに一般化した. また, 調和振動子のある極限がラプラシアンになるが, 調和振動子に対応する時間作用素が, ラプラシアンに対応する時間作用素であるアハロノフ・ボーム作用素に収束することも示した. 現在, 論文執筆の準備中である.
|