研究課題/領域番号 |
20K20887
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉松 公平 東北大学, 多元物質科学研究所, 講師 (30711030)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | ホール効果測定 / 交流法 / 永久磁石 / ステッピングモータ / 装置開発 |
研究実績の概要 |
本研究では、磁場と電流を共に交流とする二交流ホール効果測定法を安価に実現する装置開発とそれを用いた酸化物薄膜材料のホール効果測定を目的とする。初年度は主に装置開発を行い、ハードウエアとして二交流ホール効果測定装置を完成させた。交流磁場を永久磁石のステッピングモータ回転により生成することで、電磁石では不可能な数十Hzの磁場転換を実現した。市販のホール素子を用いて装置の最大磁場やホール電圧感度の評価を行った。磁石のギャップ長を変えることで磁場の大きさを変調し、最大で0.25 Tの磁場が試料に印加されることを明らかにした。本手法ではホール電圧も交流となるため、その測定にはロックインアンプを用いた。磁石を固定し、電流のみを交流とする交流ホール効果測定法を用い、ギャップ長と印加電流によりホール電圧を変調し、10 μVrmsのホール電圧(周波数 10 Hz)を数十秒の短時間で安定に計測できることを明らかにした。 上記ハードウエアの構築と同時に、磁場と電流の入力とロックインアンプによる出力ホール電圧を検出するソフトウエアの開発を行った。シリアルとRS485の典型的な通信プロトコルとUSB、Ethernetの典型的な通信インターフェイスを用い、LabVIEWをプラットフォームとしたGUIを開発した。 さらに、本装置を用いてホール効果測定を行う薄膜試料の合成にも取り組んだ。酸化物半導体のZnOや遷移金属酸化物のTiOx薄膜を合成する装置を立ち上げ、これら高品質薄膜を合成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、初年度にはハードウエア構築に留まる計画であった。しかし、その構築が予定よりも早く進み、装置の最大磁場や周波数、電圧感度などのスペック評価、装置を制御・ホール電圧出力を計測する統合ソフトウエアの製作、さらには試料合成まで進むことができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である令和3年度は本装置を用いて実サンプルの二交流ホール効果測定を行なうことを最終目的とする。始めに大きなホール電圧が得られる半導体材料(ZnO)に対して二交流ホール効果測定を適用する。PPMSなどの確立された市販の直流ホール効果装置との結果を比較し、本装置の精確性を明らかにする。その後、ホール電圧が非常に小さな強相関酸化物(TiOx)に本装置を適用する。TiOx系の薄膜でホール電圧が正確に測定できることを示すことで、あらゆる材料系に本装置が適用できることなる。 また、実サンプルの測定と同時並行で本装置のスペック向上を目指す。現状の最大磁場が0.25 Tと期待よりも小さい。その理由が試料部分にパッケージを利用し、ギャップ長が十分に小さくできなかったためである。そこで、装置の試料マウントをパッケージから基盤への直接マウントへと変更し、さらには基盤の厚みを1.6 mmから最小0.2 mmまで変更する。これにより、ギャップ長を2.0 cm から0.5 cm 程度まで減少できる。磁場の大きさは距離に反比例するため、これまでの4倍の磁場増大が期待できる。
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