研究実績の概要 |
正常細胞がガン細胞に変化するとその形状は大きく変化する。癌細胞の形態変化を数個から20個程度の集塊モデルをもとに定量的な形態特徴量(たとえば, 細胞の多角形度、界面の凹凸度など)に分割し, 統合分析する分析手法の構築をめざした。細胞の悪性度(構造の乱れ、細胞の配置の不整)・進行度との関係の再現が可能なように形態特徴量と物理的なパラメータとの関連を, モデルを用いて検証した。我々は、複数(2~3)個のベシクルを接着させて、その接着力を変化させ、接着力と接着界面形態の関係を実験的に検討した。また、ベシクル集合体の自由エネルギーを膜弾性エネルギー・表面エネルギー・接着エネルギーの和で表し、そのエネルギーを最小にする形態をSurface Evolverと呼ばれるシミュレーション手法をベシクル集合体に適用できるように発展させ、実験とシミュレーションの両方からがん細胞の特徴的な形態を支配する力学的パラメターの抽出を進めた。しかしながら、形態を再現する力学パラメータの組みが一意的には決まらないことがわかった。 そこで、がん細胞の静的な構造だけではなく動的な構造にも着目して、解析を進めることとして、Cannibalismと呼ばれる、がん細胞が近くの細胞を取り込む現象に着目した。我々の開発したシミュレーションソフトを用いると、接着力の強くかつ換算体積が0.8~0.7付近でCannibalismに類似の違いに入り組んだ構造が現れることがわかった。現在、この動的な性質に着目してがん細胞を培養し、Cannibalism過程の詳細を検討するとともに、それを再現する力学パラメーターの抽出に努めている。
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