研究課題/領域番号 |
20K20889
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
青木 大 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (30359541)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | ドハース・ファンアルフェン効果 / フェルミ面 |
研究実績の概要 |
電流誘起の新奇なフェルミオロジーの展開が本研究の目的である。反対称スピン軌道相互作用による特徴的なフェルミ面の性質をドハース・ファンアルフェン効果から微視的に明らかにすることが重要なポイントである。そのために、空間反転対称性の敗れた結晶構造に着目して、さまざまな物質探索を行った。このうちハーフホイスラー型の結晶構造を持つUPt5については、チョクラルスキー法により純良単結晶育成に成功し、ドハース・ファンアルフェン効果の観測に成功した。大きくスピン分裂した球状のホールフェルミ面を観測した。バンド計算との比較でも良い一致を示し、UPt5のフェルミ面の全体像を明らかにした。振動数の角度依存性は、2つに分裂した振動数以外に、その間にたくさんの振動数が検出された。これは、対称性を反映した2つの軌道の縮退点と偶然縮退した点が複雑に絡み合った軌道交差現象であることを明らかにした。サイクロトロン有効質量は29m0までのものが観測されており、重い電子状態を反映している。 さらに、新奇スピン三重項超伝導体UTe2のホール効果、熱電能測定を国際共同研究に基づいて行った。磁場を困難軸方向のb軸に加えたときに、メタ磁性転移で劇的に電子状態が変化することを明らかにした。この研究は、今後のドハース・ファンアルフェン効果観測のための重要な足がかりとなる。今後、UTe2に圧力や一軸圧力などを加えた場合、あるいは電流方向依存性も含めた輸送現象測定などを詳細に調べるための実験準備が現在進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた通り、空間反転対称性の破れた物質の純良単結晶育成に成功し、量子振動の観測、さらには軌道交差現象という特異な現象を見出した。5f電子の重い電子系において、このような軌道交差現象が明らかになったのはこれが初めてである。現在も、物質探索を行っていて、新たな物質が見つかりつつあり、進捗状況としては順調であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も特徴的な結晶構造に着目した物質探索を進める。特にカイラル構造に焦点を絞って物質探索、純良単結晶育成を行いたい。すでに純良単結晶育成とドハース・ファンアルフェン効果の観測に成功した系については、大電流を流しながらの軌道交差現象など新しい測定手法の開発にも取り組む。さらに、一軸圧力など新たなチューニングパラメータを導入した実験も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染拡大により、試料作成の計画に大きな変更が生じた。そのため、原材料費の支出がなくなった。また、海外出張の旅費も執行しなかった。次年度、試料育成を集中的に行うため、原材料購入費用および試料評価のための寒剤費としての支出を予定している。また、打ち合わせのための海外出張旅費の支出を予定している。
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