研究課題/領域番号 |
20K20891
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
前田 京剛 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (70183605)
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研究分担者 |
加藤 雄介 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20261547)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | マイクロ波顕微鏡 / フラックス・フロー |
研究実績の概要 |
本研究は,摩擦現象によるエネルギーの損失を減らすことを大目標とし,このために,界面摩擦と同じ運動方程式をもつ超伝導体磁束量子格子のダイナミクスをモデル系として利用して問題攻略の糸口を探るのが,本研究の大目的である。具体的には,磁束量子が運動している状態でも,欠陥等のランダムな不完全性と相互作用し,更に,磁束量子同士の相互作用を通じて発生する複雑なエネルギー散逸(動的ピン止め)過程の詳細を理解することを目的として,マイクロ波顕微鏡(空間分解能100nm)を導入し,運動する磁束量子一本がピン止め中心との相互作用で周辺に引き起こす局所的電流密度変化を実時間計測し,さらに,磁場の強さや探針の曲率半径を変化させて,その変化が周辺の磁束量子へ散逸する過程の詳細も克明に記録することで,当初目的を達成する。以上を念頭に置いて,本年度は,以下を実施した。 (1)本研究の主要実験手法である,低温動作マイクロ波顕微鏡について,これまで作製・利用してきたSTM型を解体し,AFM型への改造を行った。現在,室温でトポ像並びに複素伝導度像が測定できるようになっている。これを低温動作用にするためのクライオスタットの設計を終え,必要な部品を製作あるいは注文し,現在制作途中である。作製ののち,低温動作の試験を繰り返し,低温動作マイクロ波顕微鏡を完成させたい。 (2)FeSeバルク単結晶を気相成長法にて,また,同薄膜試料をパルスレーザー蒸着法にて作製した。これらは,引き続き,定常的に行う。 (3)磁束量子のダイナミクスを別手法でマクロに測定するため,独自開発の十字型空洞共振器を用いて,マイクロ波フラックス・フロー測定を,気相成長法で作製したFeSe単結晶1ピースについて,温度・磁場の関数として行った。これにて,磁場・温度相図を決定した。現在,再現性の確認等を目的として,別のピースの測定を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍により,研究計画採択通知ならびに開始が,当初予定より3か月遅れ,また,関連して,学内の活動の一部制限,注文した部品の未着等の理由が重なり,初年度終了時点で,上記実績にとどまっている。
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今後の研究の推進方策 |
二年間の研究計画において,上記事情による遅れはかなり深刻であるが,焦っても仕方ないので,当初計画に沿って,できるところまで研究を進める。 (1)AFM型マイクロ波顕微鏡の低温動作化を達成し,低温動作AFM型マイクロ波顕微鏡を完成させる。 (2)同装置を用いて,磁束量子が探針下を通過したときのシグナルを検知する。 (3)FeSeバルク単結晶における(マクロ)フラックスフローについてもデータを,磁場・温度の関数として取得する。 (4)(2)(3)を合わせて,フラックス・フロー下におけるエネルギー散逸について,積年の謎を解決する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で国内外の学会がことごとくオンラインになり,当初予定していた旅費に使うことが全くなかったこと,同じ理由から,マイクロ波顕微鏡の低温動作化が遅れており,その分,寒剤を使用することがなかったことなどが主な原因である。次年度は,低温動作化を達成し,遅れを取り戻すべく,予定以上に寒剤の使用が増えるであろうことが予想され,また,学術会合も一部対面となるであろうことが予想されるので,旅費としての使用も増えると予想される。
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