研究課題/領域番号 |
20K20893
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
橘高 俊一郎 中央大学, 理工学部, 准教授 (80579805)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 膨張計 / 磁歪 / 超伝導 |
研究実績の概要 |
初年度は、自作のキャパシタンス式膨張計の開発・改良に取り組んだ。具体的には、以下の対策を施し、熱膨張・磁歪の測定分解能をサブピコメートル(1 pm以下)にまで高めることに成功した: (1) 電極間の水平性が安定するように支柱を長くし、バネの役割を担うワイヤーの間隔を広げ、電極の傾斜を抑えるデザインに変更した(磁気トルク対策)。(2) 試料固定用ネジをロックナット式に変更した(再現性の向上)。(3) 材料毎の膨張率の差による膨張計の局所的な歪みや電極間距離への影響を防ぐため、全ての部品をリン青銅製に統一した(バックグラウンドの低減・再現性の向上)。(4) 従来は数秒間であった静電容量測定の積算時間を数十秒にまで増やした(測定感度の向上)。 開発したキャパシタンス式膨張計を用いて、磁場方位を精密に制御しながら非従来型超伝導体Sr2RuO4の磁歪測定を行った。その結果、ab面に平行な磁場下において上部臨界磁場Hc2で明瞭な1次相転移を観測し、さらにHc2よりも少し低い磁場で弱い磁歪の異常を見出した。同一試料を用いてキャパシタンス式ファラデー法による極低温磁化測定も行ったところ、磁化では超伝導相転移が若干ブロードになり、超伝導相内部の異常は不明瞭になることが分かった。これは磁化測定で磁場勾配を用いたことに起因し、比較的大きな試料では磁場の不均一性によって転移がブロードになったためと解釈できる。以上のように、従来の磁化測定では困難であったSr2RuO4の超伝導相内部における微弱な変化を高感度磁歪測定により検出することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キャパシタンス式膨張計の開発・改良が計画通りに進み、Sr2RuO4の磁歪や磁化に関する実験結果も順調に得られているため。
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今後の研究の推進方策 |
Sr2RuO4に関する磁歪の測定結果を論文にまとめて発表する。また、超伝導相内部で相転移が期待される他の非従来型超伝導体(例えば、CeCoIn5など)についても開発した高感度膨張計を用いて極低温磁場中実験を行い、新たな知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に所属が変わり、新たな研究室立ち上げの一環として、2021年2月末まで実験室の大規模改修工事を行った。そのため、一部の消耗品の購入を2021年度に延期した。今年度は、寒剤や低温実験用材料、論文投稿費用などに研究費を使用する予定である。
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