研究課題
本年度は、昨年度までに開発した自作のキャパシタンス式のサブピコメートル膨張計を用いて主に重い電子系超伝導体CeCoIn5の磁歪測定を行った。CeCoIn5は超伝導1次相転移を伴う強いパウリ常磁性効果を示し、ab面方向の磁場下ではFFLO超伝導の実現が有力視されている。一方、c軸方向の磁場下においては、ab面と同様に強いパウリ常磁性効果が観測されるが、FFLO超伝導の実現可能性は未だ明らかになっていない。そこで、本研究では開発した自作の膨張計をCeCoIn5の研究に応用し、c軸方向の磁場下における磁歪測定を0.12 Kの極低温まで行った。その結果、c軸方向の磁場下で履歴を伴う超伝導1次相転移の観測に成功し、さらに極低温では1次相転移点近傍で磁歪が微弱ではあるが多段構造を示すことを明らかにした。本結果により、CeCoIn5のc軸磁場下において超伝導内部相転移が起きている可能性が示唆される。一方、測定は1つの単結晶試料に集中して行っているため、多段の超伝導1次相転移が試料不均一性に伴う現象である可能性は否定できていない。今後、別の単結晶試料を準備して磁歪の再現性を検証する必要がある。本年度は並行して、昨年度までに行った非従来型超伝導体Sr2RuO4の磁歪測定結果の考察や量子臨界現象を示すYbRh2Si2の磁場角度依存性の研究を進めた。また、膨張計の更なる高感度化・小型化を目指して、膨張計のデザイン改良にも引き続き取り組んだ。
2: おおむね順調に進展している
開発したキャパシタンス式膨張計をCeCoIn5の研究に応用し、高感度化による恩恵を受けて新たな実験結果が順調に得られているため。膨張計の更なる高感度化・小型化に向けた装置開発も進んでおり、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
別のCeCoIn5単結晶試料を用いて磁歪の多段転移の再現性を検証する。また、ベクトルマグネットと組み合わせて磁歪の磁場角度依存性まで追究する。並行して、膨張計の高感度化・小型化を目指す。
寒剤である液体ヘリウムの納期が遅れたため。次年度に液体ヘリウムの購入費として使用する。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Physical Review B
巻: 105 ページ: 054515(1-9)
10.1103/PhysRevB.105.054515
Review of Scientific Instruments
巻: 92 ページ: 123908(1-9)
10.1063/5.0067759
Journal of the Physical Society of Japan
巻: 90 ページ: 064703(1-6)
10.7566/JPSJ.90.064703
https://www.phys.chuo-u.ac.jp/labs/kittaka/index.html