研究課題/領域番号 |
20K20897
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長谷川 哲也 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10189532)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 熱輸送制御 / ハイブリッド材料 / 相転移 |
研究実績の概要 |
スマート熱輸送制御デバイスの実現に向けて、主に無機材料の検討を行った。 相転移材料に関しては、Ti3O5のフリースタンディング膜の作成に成功した。Ti3O5は光や圧力など様々な外部刺激により相転移を起こす材料として知られているが、これまでデバイスに有利な薄膜の作成例はほとんどなかった。我々は、スピネルのシード層を用いることでエピタキシャル薄膜の合成に成功していたが、基板との相互作用により相転移が抑制されるという問題があった。そこで本研究では、水溶性の犠牲層上に成膜し、犠牲層を溶解させ剥離することで、Ti3O5のフリースタンディング単結晶薄膜を得た。 電界効果デバイスに関しては、Ga系やZn系、Sn系の酸窒化物、酸硫化物を中心に材料探索を進めた。その結果、ZnOS系では、ZnON系に匹敵する低い熱伝導率を達成した。ZnOSはZnONに比べ化学的安定性が高く、有望なアモルファス材料と言える。また、電気化学デバイスへの第一ステップとして、ZnOSを用いた電界制御による薄膜トランジスタを作製し、良好なトランジスタ特性を確認した。 ヒドリド導入により電子物性を大幅に制御できる系の探索にも注力した。その結果、Ir系層状ペロブスカイトSr2IrO4で、ヒドリドの導入による絶縁体-金属転移を見出した。絶縁体-金属転移に応じて熱伝導率も大幅に向上すると考えられる。Ir系ではキャリア導入による超伝導の発現も理論的に予想されており、その場合、より大きな熱伝導率の変化が達成できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
相転移材料に関しては無機物質を中心に検討を進め、水溶性の犠牲層上に成膜することでTi3O5のフリースタンディング膜を得ることに初めて成功した。一方、電界効果デバイスに関してはZnOS系が有望であることを明らかにした。特に前者は当初予想していなかった成果であり、プラスチック基板上への転写も可能であることから、デバイス作製が大いに現実味を増した。後者はハイブリッド材料ではないもののデバイス試作まで進んでおり、全体としては順調に研究が進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
相転移材料としてはTi3O5に注力し、まずは光照射による相転移を実証する。次に、イオン液体とハイブリッド化し、光とお温度によるスマート熱輸送制御デバイスを構築する。 一方で、ZnOSを中心としたアモルファス系にプロトンやヒドリドを導入することで電気化学デバイスを試作する。結晶系についても材料探索を進める。予備実験の結果、Ir系層状ペロブスカイトが有望であり、ヒドリド導入による熱輸送特性制御を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、年度の前半研究を完全に閉鎖した他、年度全体にわたって研究室滞在者数を半分に制限する措置をとった。このため、研究の初段階である材料探索に若干の遅れが生じた。その後は、探索する対象を絞ることで対応した。今年度も、滞在者数に関する制限は続いているが、初年度に検討した材料を用いたデバイス作製にウエイトを移すことで、研究全体を滞りなく遂行したい。
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