研究課題
スマート熱輸送制御デバイスの実現に向けて、無機材料の検討をさらに進めた。相転移材料に関しては、Ti3O5のフリースタンディング膜をフレキシブル基板上へ転写することに成功した。Ti3O5は光や圧力など様々な外部刺激により相転移を起こす材料として知られている。我々は、スピネルのシード層を用いることでエピタキシャル薄膜の合成に成功していたが、水溶性の犠牲層を挿入することで単結晶薄膜をプラスチック基板上に転写した。本薄膜は特に圧力誘起相転移デバイスへの応用に適している。電界効果デバイスに関しては、ZnOSを用いた電界制御による薄膜トランジスタの作製にすでに成功している。本年度は、ZnOSの高移動度の起源を探るため、キャリア濃度の低い試料についてrandom barrier modelを用いて伝導機構の解明を行った。その結果、予想に反してバリアの高さ及びその標準偏差ともに従来型のIGZOと同程度であった。これは、Zn-S結合の共有結合性が強いためと解釈できる。フッ素導入により電子物性を大幅に制御できる系の探索にも注力した。その結果、単純ペロブスカイトCa2RuO4および層状ペロブスカイトLaSrNiO4で、フッ素導入による金属―絶縁体転移を見出した。絶縁体-金属転移に応じて熱伝導率も大幅に向上すると予想される。また、LaSrNiO4はポーラロンの形成に由来して高い誘電率を示したため、誘電性を利用した複合デバイスの作製も視野に入ったと言える。
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