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2020 年度 実施状況報告書

原子層結晶を用いた超伝導エーデルシュタイン効果の実証

研究課題

研究課題/領域番号 20K20904
研究機関国立研究開発法人物質・材料研究機構

研究代表者

内橋 隆  国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, グループリーダー (90354331)

研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2022-03-31
キーワード超伝導 / スピントロニクス / 原子層結晶
研究実績の概要

エーデルシュタイン効果は、表面界面での空間反転対称性の破れによるラシュバ型軌道相互作用(SOC)に起因する効果であり、非磁性体内でスピン流生成を可能とするため、大きな注目を集めている。本研究では、原子1-2個程度の厚さの2次元超伝導体結晶として、シリコン基板表面上のインジウム原子層およびタリウム鉛原子層を扱う。これらの系はすでに角度分解光電子分光(ARPES)によりラシュバ型のスピン分裂が直接に観測されており、また、系全体が表面界面から構成されるため、エーデルシュタイン効果が強く現れると期待される。
本年度はエーデルシュタイン効果発現の前提となるスピン軌道ロッキング現象についてインジウム原子層を対象とした詳細な解析を行った。面内臨界磁場および試料伝導度から求めたスピン散乱時間と電子弾性散乱時間がほぼ等しくなることから、スピン反転を伴う動的なスピン軌道ロッキング効果がこの系で本質的な役割を果たしていることを発見した。これは、従来の理論で予想されていた静的なスピン軌道ロッキング効果とは全く異なる機構である。また、本研究で必須となるシャドーマスクを用いた試料パターニングプロセスを改善し、従来より高い精度でマスクパターンを転写できることを確認した。その他、装置の大幅な改造をおこなった。超伝導マグネットの最大印加磁場を5Tから9Tにアップグレードして、測定領域を広げた。試料を装着するカプセル型測定ヘッドの設計の見直しにより、磁場の掃引中も試料温度を安定化させることに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究においては、申請者が独自に開発した多元極限環境(超高真空・極低温・強磁場)対応の電子輸送測定装置が中心的な役割を担うが、試料作製チャンバーに付属するクライオスタット部分の経年劣化および予期しないトラブルにより、実験を十分に実施することができなかった。現在は装置は復旧しているため、今後研究計画を加速していく。

今後の研究の推進方策

数百nm程度の微細電極パターンに対応したシャドーマスクを集束イオンビーム(FIB)によって作製し、シリコン基板表面上に成長したインジウム原子層のパターニングを行う。設計通りに転写できたかを確認するためには、STMによる観測が必要となる。このため、STMスキャン範囲を特定位置に誘導するためのマーカーを同時にマスクに加工するなどの工夫を行う。実験成功の鍵を握るのは、スピン拡散長の増大である。実験的にもとめたスピン散乱時間とバンド計算によりもとめたフェルミ速度より、現在の試料の典型的なスピン拡散長は70nm程度と見積もられる。試料作製条件を最適化することで欠陥密度を減らし、スピン拡散長を200nm以上に伸ばす。これらの試料作製技術が確立できれば、エーデルシュタイン効果によって生じたスピン偏極の測定は十分に可能であると考えている。

次年度使用額が生じた理由

実験装置のトラブルにより、液体ヘリウムを用いた実験を十分に行うことができなかったことによる。次年度は、試料観測のためのSTMの改造などに使用する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Atomic-layer Rashba-type superconductor protected by dynamic spin-momentum locking2021

    • 著者名/発表者名
      Yoshizawa Shunsuke、Kobayashi Takahiro、Nakata Yoshitaka、Yaji Koichiro、Yokota Kenta、Komori Fumio、Shin Shik、Sakamoto Kazuyuki、Uchihashi Takashi
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 12 ページ: 1462(1-8)

    • DOI

      10.1038/s41467-021-21642-1

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Orbital angular momentum induced spin polarization of 2D metallic bands2020

    • 著者名/発表者名
      Takahiro Kobayashi, Yoshitaka Nakata, Koichiro Yaji, Tatsuya Shishidou, Daniel Agterberg, Shunsuke Yoshizawa, Fumio Komori, Shik Shin, Michael Weinert, Takashi Uchihashi, and Kazuyuki Sakamoto
    • 雑誌名

      Physical Review Letters

      巻: 125 ページ: 176401(1-6)

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.125.176401

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] ラシュバ型原子層超伝導体における動的スピン軌道運動量ロッキング効果の解明2021

    • 著者名/発表者名
      横田健太、吉澤俊介、内橋隆
    • 学会等名
      NIMS先端計測シンポジウム 2021
  • [学会発表] Electron transport study of atomic layer Rashba-type superconductor2021

    • 著者名/発表者名
      K. Yokota, S. Yoshizawa, T. Kobayashi, Y. Nakata, K. Yaji, F. Komori, S. Shin, K. Sakamoto, T. Uchihashi
    • 学会等名
      MANA Symposium 2021
    • 国際学会
  • [学会発表] 原子層ラシュバ型超伝導体の電子輸送研究2021

    • 著者名/発表者名
      横田健太, 吉澤俊介, 小林宇宏,中田慶隆,矢治光一郎, 小森文夫, 辛埴, 坂本一之, 内橋隆
    • 学会等名
      日本物理学会 第76回年次大会

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公開日: 2021-12-27  

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