研究課題/領域番号 |
20K20906
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
堀場 弘司 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (10415292)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 電気二重層トランジスタ / 転換可視蛍光収量 / オペランド軟X線吸収分光 |
研究実績の概要 |
近年、強相関酸化物に対するキャリアドープによる物性変調・巨大応答発現の手法として、電気二重層トランジスタ(EDLT)構造によるキャリア蓄積が大きな成功を収めているが、この動作メカニズムとして酸化物への酸素欠損誘起、水素イオンの注入、物質自体のエッチング効果など、純粋なキャリアドープ以外の様々な効果が報告され、議論が収束していない物質例も多い。このようなEDLTの複雑な動作メカニズムを解明していくためには、その輸送特性の測定のみでは不十分であり、結晶構造解析や分光測定による電子状態解析など様々な測定手法を組み合わせることが必要不可欠である。軟X線吸収分光(XAS)は、特に軽元素の元素選択的な電子状態を直接観測できる優れた手法であるが、これまでEDLT動作時のキャリア蓄積領域のXAS観測は成功例は報告されていない。その理由は、使用する軟X線の物質への侵入長が非常に短いため、イオン液体を透過させることが困難であるという本質的な問題に起因する。そこで本申請では、転換可視蛍光収量という新たなXAS測定手法によりイオン液体透過時の減衰を低減させ、EDLT動作時のキャリア蓄積領域のXAS観測を達成することを目的としている。 今年度の研究実績としては、これまで開発を進めてきた転換可視蛍光収量軟X線吸収分光測定装置において、デバイス動作中のオペランドXAS観測を可能とするための試料ステージの開発を行った。これにより真空中の測定装置内において最大4端子の電圧印加、電流測定が可能となった。実際にデバイス構造を最適化したEDLT試料を装置内にセッティングすることにより、目標であるEDLT動作時のキャリア蓄積領域のXAS観測が達成出来ると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請の目標は転換可視蛍光収量という新たなXAS測定手法によるEDLT動作時のキャリア蓄積領域のXAS観測を達成するための装置を開発することにある。現在までに、これまで開発を進めてきた転換可視蛍光収量軟X線吸収分光測定装置において、デバイス動作中のオペランドXAS観測を可能とするための試料ステージの開発を行い、これにより真空中の測定装置内において最大4端子の電圧印加、電流測定が可能となった。装置の開発としてはほぼ終了し、測定のためのEDLT構造の最適化を行う段階に来ており、計画は順調に推移していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本申請の目標は転換可視蛍光収量という新たなXAS測定手法によるEDLT動作時のキャリア蓄積領域のXAS観測を達成するための装置を開発することにある。現在までに実験装置の開発としてはほぼ終了し、測定のためのEDLT構造の最適化を行う段階に来ている。今後は実際に構造を最適化したEDLTデバイスの真空中での動作試験などを行い、最終的にEDLT動作時のキャリア蓄積領域のXAS観測を実現する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存の物品により装置の開発をある程度進めることが出来たために、研究は順調に推移しているが次年度使用額が生じた。翌年度請求した助成金と合わせて、更なる装置開発および改造のための費用として使用する予定である。
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