研究課題/領域番号 |
20K20907
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
櫻庭 俊 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 主幹研究員 (90647380)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | 分子シミュレーション / 分子動力学 / 力場 / 生成モデル / 記号回帰 |
研究実績の概要 |
古典分子動力学(MD)シミュレーションは、分子構造を計算機上に再現し計算することで分子の種々の物理化学的特性を解析する手法である。古典MDシミュレーションでは原子間相互作用や原子グループ感の相互作用を記述する力場の関数、並びに力場関数のパラメータが分子の計算機中での振る舞いを規定するため、適切な力場のパラメータ決定は極めて重要である。本研究では古典分子動力学法で用いる力場を改良するため、生成モデルや記号回帰などの機械学習アルゴリズムを利用しパラメータや関数系を自動で決定する新たな力場決定アルゴリズムを開発する。 2022年度は記号回帰に基づく力場決定のプロトタイプを作成し、実際に記号回帰に基づくMDポテンシャル関数の決定を行い問題の洗い出しを行った。記号回帰は、データから自動的に単純で高速に計算可能な関数を見つけ出す手法であり、これを高精度な計算によって導かれた力のデータに対して用いることで、高速に近似する関数を見つけ出すことが期待される。近年の研究成果を取り入れ、力に対して適用可能な記号回帰の実装を作成した。記号回帰で決定される式は精度と複雑さの間にトレードオフが存在することから、パレート最適な候補を優先的に選択するようなプログラムを作成した。実際に、量子化学計算による水分子の相互作用エネルギーおよびその勾配(力)を用い、記号回帰に基づく力場を作成することが可能であることを確認した。これらの成果は量子生命科学会および第36回 分子シミュレーション討論会および量子生命科学会第4回大会で学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
使用予定の計算資源が納入遅延を起こすなどトラブルが続き、所属内の異動等もあったため遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は2022年度に作成した実装を元に改良を行い、実際に多様なデータセットを作成して適用することで実用性を示していく方針である。一方で、テスト利用において生成された式を確認した結果、機械学習特有の「学習データのみにフィットした関数」を出す傾向が問題になった。ここから、実用可能な形で関数を出すためにはhard constraintと呼ばれる「必ず達成しなければならない制約」の導入が必要であることが示唆された。これは例えば、遠距離で相互作用が0になる、等の制約に相当する。これらの制約の導入を行う形でアルゴリズムを改良し有用な関数決定法の導出を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に貸与を受けて利用予定であった大型計算機が納入遅延を起こし、研究計画を変更したため次年度使用が生じた。主に大型計算機の利用費(京都大学システムD/Gのレンタル)として使用する予定である。
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