研究課題/領域番号 |
20K20908
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
星野 真弘 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (90241257)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | 磁気リコネクション / 相対論的プラズマ / 粒子加速 / 高エネルギー天体 |
研究実績の概要 |
磁気リコネクションは、実験室プラズマから磁気圏、宇宙において普遍的にみられるプラズマ素過程であり、磁気エネルギーを解放しプラズマを加熱し非熱的粒子も効率的に生成する機構として活発な研究が行われてきている。また近年とりわけ、高エネルギー天体現象において、爆発的にX線やガンマ線を放射するメカニズムとしても注目されている。
天体現象で重要となる相対論的高温プラズマでのリコネクションについて、本研究では、プラズマ粒子シミュレーションを用いて研究を進めてきたが、昨年までに、当初の目標であった、電流層のドリフト速度が相対論になった時のリコネクションの成長への影響についてほぼ決着がついたので、本年度からは、これまでの研究を深化させ、リコネクションでの非熱的粒子の生成について調べた。具体的には、磁場エネルギーが解放された結果、熱的エネルギーと非熱的エネルギーにどのように配分されるかについて、粒子シミュレーションを用いて調べた。様々な要因に左右される複雑なリコネクション過程を単純化するために、電子と陽電子のペアプラズマを仮定し、更にプラズマシートの電子慣性長に対する厚みは固定して、プラズマシート温度と縦磁場の強さの関数として、熱的エネルギーと非熱的エネルギーの分配について調べた。過去の研究では縦磁場効果を入れていなかったので、今回は縦磁場効果を付け加えたことが新しい視点である。
空間2次元の粒子シミュレーションの結果、初期のプラズマ温度が相対論的高温の時は、リコネクションによって生成された高温プラズマのエネルギー密度の90%以上が非熱的成分となり、一方初期のプラズマ温度が非相対論的になると、非熱的粒子の生成の効率が下がることが分かった。また、縦磁場が大きくなると非熱的粒子の生成率がさがることが明らかになった。この結果は The Astrophysical Journalに出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のために、国内外での研究交流が限定的であったが、当初の目的であった相対論的な速度でドリフト運動する場合のリコネクションの成長過程については、およそ解決することができたので、次のステップの課題として、リコネクションでの非熱的粒子生成について研究をすすめており、その初期成果を Astrophysical Journalに発表した。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍で出張が限られ研究交流が限定的であったが、現在はコロナ禍が終息しつつあり、今後は国内外の交流を開始し、更に議論を深めて、最終成果を纏めていく予定である。特に、これまでは空間2次元でのPICシミュレーションを行ってきたが、3次元計算に向けた取り組みも開始する、
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍でほとんどの出張が取止めとなり、国内はもとより諸外国の研究者などとの自由な議論や意見交換等が制限された。しかし、限定的ではあったが、オンライン会議などを通して、研究交流をおこない、研究課題はおおむね順調に進めることができた。現在コロナ禍が終息してきており、次年度は、国内外の学会や研究会などで対面での交流を行い、最終成果としてまとめる予定である。
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