研究課題/領域番号 |
20K20909
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大野 哲靖 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60203890)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 単純トーラス型プラズマ装 / 螺旋状プラズマ / 高密度水素・窒素混合プラズマ / アンモニア合成 / NHラジカル / 質量分析器 / 水素原子 / 窒素原子 |
研究実績の概要 |
単純トーラス型プラズマ装置を用いて,長い磁力線長有する螺旋状プラズマを生成し,近接領域に異なった電子温度(高温,低温)領域が存在するこれまでにない水素,窒素混合プラズマ反応場を形成し,高電子領域(5eV以上)での水素分子の解離過程と低電子温度(1eV以下)での窒素分子イオンの解離性再結合過程を共存させることにより,アンモニア合成を行った。 螺旋状のプラズマを生成するためのトロイダル磁場は10 mT, 垂直磁場は2.7 mTである。放電用水素ガス流量を150 sccmとし,窒素ガス流量を150 sccmから25 sccmまで変化させた。可視分光器により,中間体としてアンモニアの生成過程途中またはアンモニアの電子衝突解離過程で発生するNHラジカルの発光(波長336 nm)が明瞭に観測された。NHラジカルの発光は窒素ガス流量が減少にともない増加した。また,窒素ガス流量の減少に伴い放電電力が上昇し電子密度が上昇するが,電子密度で規格化されたNHラジカル発光強度も窒素ガス流量の減少ともに増加しており,効率的なアンモニア合成が行われていることを示唆している。 また,質量分析器でマススペクトルの観測を行った。質量18(水由来の強度は十分小さい)のスペクトル強度は窒素ガス流量の減少(水素分圧増加)に伴い,単調に増加した。また放電電力で規格化したスペクトル強度は窒素ガス流量50sccm(水素分圧0.8)の時に最大値となった。また,最大値におけるアンモニアの密度は質量分析器側で1.4×10^13 m^(-3),真空容器内では2.1×10^15 m^(-3)程度であると概算された。これは窒素分子の11%,水素分子の1.2%程度であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウィルス感染症対策のために,研究協力者の実験実施時間が制約された。しかし,単純トーラス型プラズマ装置における長い磁力線長有する螺旋状水素・窒素混合プラズマにおいてアンモニア生成を示唆するNHラジカルからの発光と質量数18のマススペクトルが観測された。また,それらのガス流量依存性が明確となるとともに,アンモニアの生成効率に関するデータも取得されており,研究は概ね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
これまで,螺旋状水素・窒素混合プラズマにおいてアンモニアの合成とそのガス流量依存性が取得されている。今後は,以下の課題に取り組む。 (1)より高密度の螺旋状水素・窒素混合プラズマを用いたアンモニア合成の高効率化を行う。 (2)軽水素に替えて重水素ガスを用いたアンモニア合成実験により,水由来の質量スペクトルとの分離を行い,アンモニアの生成量と生成機構をより明確化する。 (3)ヒータを用いて鉄触媒の温度を変化させることにより,鉄触媒の温度とアンモニア生成量との関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
関連する消耗品費(分光用の光学部品,陰極材料,真空保守部品,重水素ボンベ)の 予算執行を次年度に変更をしたため。
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