2022年度は陰極構造の凸型ピラミッド構造を用いた加熱実験に取り組んだ。シリコンウエハを洗浄後、パイロジェニック酸化により 500nm の酸化膜を形成し、続いてフォトリソグラフィと Wスパッタを60分間行い、アセトン洗浄によるリフトオフを行い陰極構造を作製した。その後、DC電源を用いて陰極を通電加熱しその時の様子をデジタルマイクロスコープで観察した。陰極Wの両端をモリブデン板でクランプ固定し、通電を可能にした。通電時、DC電源は定電流モードに設定し、0Aから0.05Aずつ上げてその時の電流電圧を記録し観察した。電流0.60A、電圧17.30Vの電力投入時にピラミッド構造が赤熱し始め、通電加熱による温度上昇を確認することができた。 研究期間を通じての実績として、シリコン(100)ウエハの異方性エッチングを利用したピラミッド状の突起および溝構造(それぞれ陰極および陽極の基本構造)形成に焦点を当て、微小構造作製に取り組んだ。SiO2ハードマスクとテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)を用いて様々なハードマスク形状およびウエットエッチング条件を試行した結果、150μm角のSiO2パターンでTMAH15%溶液に20%IPAを添加して285分間エッチングを行うことで、スムースな側壁をもつ高さ135μmの理想的なピラミッド構造を作製することに成功した。一方、陰極構造の凹型ピラミッド構造についても、150μm角の開口部を空けたSiO2ハードマスクを用いてTMAH20%溶液で240分間エッチングを行うことで深さ188μmの良好な形状の作製に成功した。MEMS技術を利用して作製した電極構造表面にW薄膜を堆積し、これを通電加熱することで温度上昇させることができ、極微細構造を用いたプラズマ発生技術の基礎的な作製技術の知見を得ることができた。
|