本年度は、石英容器を用いたTPCの検討とテストベンチ構築を引き続き行い、熱交換系、液体キセノン回収系の準備を行なった。石英容器については、ラドン混入空気を容器外側に導入して内部へのラドン侵入量を測定し、フランジ部の密閉性の再検証を行った。その結果、フランジ部から相当量のリークがあるとの結果を得た。現有ガスケットのガスタイト性が原因と考えられ、代替としてバルカー製ガスケットを導入し検討した。また、石英容器組み立て作業の中で、フランジ締め付け時に破損が起こりやすく、改善が必要であることが分かった。複数のフランジネジを同時に閉めることは不可能なため、トルクの不均衡を回避できないからと考えられる。フランジ部の厚みを十分に厚く変更したが、固体キセノンTPCとして利用する際には運転中の石英容器破損の危険性を避ける必要がある。上部フランジを解放した容器にすることも考えられるが、石英容器下部を冷却するための液体窒素から窒素ガスがキセノンに混入してしまう。石英容器下部に隔離した液体窒素によるコールドフィンガーを増設する必要があり、これらの問題の対応策を講じるまで現セットアップでのキセノン固化は一旦休止した。 名古屋大学における研究力強化事業の一環である最先端国際研究ユニットとして、ドイツ・フライブルグ大と連携して石英容器などを用いた将来の暗黒物質探索実験を開拓する「暗黒物質国際創生ユニット」が採択され、2022年9月より活動を開始した。本ユニットでは、将来の検出器内部ラドンの低減を目指し、主に石英容器を用いた液相気相2相式密閉型TPCの開発が主題であるが、液相一相式TPCや本課題の固体キセノンTPCも検討も視野に入れてゆく。2023年3月にはユニットキックオフシンポジウムを行い、フライブルグ大研究者とこれらの新しいアイデアについての情報交換を行なった。
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