研究実績の概要 |
本研究の目的は、超薄膜グラフェンを用いた革新的軟 X 線用光学素子の基礎開発を完遂し、地球・宇宙観測用飛翔体や地上装置への搭載を目指すことで、地球・宇宙物理学から医学・生物学分野までにわたる様々な学術領域における研究課題への取り組みに貢献することである。 この中で本年度は特に重要なフリースタンディングサンプルに対する耐圧性を評価するため、音響試験および静加圧試験を各種サンプルに対して実施した。本試験は、単層 (フリースタンディング穴直径 10 um) / 2 層 (穴直径 10 um) グラフェンおよび 30-60 層の超薄膜グラファイト (穴直径 70 um) に対し行い、前者については JAXA つくば宇宙センターにて H-IIA ロケットの認定試験レベル (140.5 dB, 80 s) を加音し、全サンプル試験前後で基板とグラフェンの剥離や破れなどの変化がないことが確認できた。 後者の静加圧試験については、60 秒間一定の圧力 0.1, 0.2, 0.3, 0.5, 1.0 atm を順次加え、その試験前後の表面状態を評価した。結果、1 層については 0.5 atm, 2 層については 1 atm, 超薄膜グラファイトについては 0.5 atm の耐圧性を有することが分かった。さらに 2 層グラフェンについては 1 atm の差圧環境下での耐久性も評価し、48 hrs 以上破れが生じないことも確認できた。ただし、耐圧性については穴径に大きく依存すること、転写時のシワや製膜時の触媒金属の多結晶構造に沿った破れが多くみられたことから、高機能化に向け、デザインパラメータの最適化、転写工程の改善と膜質の向上などが重要であることが分かった。
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