研究課題/領域番号 |
20K20924
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
伊藤 由太 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究職 (30711501)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 原子線分光 / 原子ビーム / 超重元素 / RFイオンガイド |
研究実績の概要 |
原子番号100を超える超重元素では、原子核の持つ強大なクーロン力によって軌道電子が強い相対論効果を受ける。103番元素ローレンシウム(Lr)では、その相対論効果によって価電子軌道の周期律異常が初めて出現すると予測されている。Lrの価電子軌道を直接決定する手法として、Stern-Gerlach実験に代表される原子線分光法が挙げられる。原子線分光法には低速原子ビームが不可欠であり、その実現のためにイオンガイド技術を組み合わせた再結合型中性化機構による原子ビーム生成法の確立を目指す。 2020年度は、低エネルギーイオンビームを電子再結合が行われる電子雲中へ効率良くかつ位置やビーム径を制御しながら輸送できるようにイオン光学系を改良した。その結果、イオンビームが電子雲から受ける空間電荷の影響を定量的に評価することができた。並行して、生成される原子ビームを加熱したフィラメントで再電離し直接検出するLangmuir-Taylor検出器の開発を進めた。Rb蒸気を用いた動作試験では、コリメートしたRb原子線の空間分布を測定することに成功した。また、イオンビームを用いた性能評価において、フィラメント温度や引き出し電圧などの最適条件を求めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、当初計画通りに生成される低速原子ビームの生成及び検出に重要な要素を開発することができた。より低エネルギーなイオンビーム輸送に用いるRFQイオンガイドは、設計段階まで進め、製作と動作試験を進めていることから、おおむね順調に進展している、と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
改良したイオン光学系にRFQイオンガイドを組み合わせ、より低エネルギーなイオンビーム での中性化実験を進める。開発したLangumuir-Taylor検出器は、原子ビームの再電離イオン電流測定によって検出を行うよう設計されており、まずはこれを用いて原子ビーム生成を直接検証する。同時に、より高感度での測定ができるようイオン検出器を組み合わせたLangmuir-Taylor検出器の開発を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の開発において、既存部品の組み合わせを用いたことやRFQイオンガイド及びレーザーを用いたエネルギー分析装置の開発が設計段階に留まったことにより、当初計画に比べて開発に係る支出が少なかっため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、2021年度分の経費と合わせて、2020年度の設計結果を基に実施するRFQイオンガイドの開発等に係る費用として使用する。
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