本研究では、大強度加速器におけるビーム検出器の放射線損傷の問題を、従来とは全く異なる動作原理に基づく検出器の開発で克服することを目指す。そこで、大強度ビームによる空間電荷効果が引き起こす電場擾乱を検出可能である事を示し、微小な電場擾乱の検出は誘電体の持つ非線形電気光学効果を応用する事で実現する。誘電体に電場を印加すると屈折率が変化する事が知られており、光学産業では屈折率や光透過を制御する技術として応用されている。これを逆転の発想で応用、ビーム起因の電場擾乱により引起こされる屈折率変化を検知、これによりビーム検出を実現する。この方式なら、検出器の媒体に放射線損傷が起きても、ビームにより引き起こされる電場擾乱の大きさに影響はないため、検出器としての動作そのものに大きな影響はない。本研究で全く新しい 検出原理を実証することで放射線損傷問題を克服、より大強度なビームを用いた実験を可能にし、より高いエルギー領域に迫る新しいアプローチを切り拓く。そこで令和3年度に、誘電体の屈折率の変化を検出するセンサーの開発、及び本研究の仕上げとして実施を予定しているビーム照射試験の準備を進めた。センサー開発は、誘電体と光センサーの組み合わせにより各種製作した。開発したセンサーへの陽子ビーム照射をR4年度に計画していたが、実施する予定であったJ-PARC・MR陽子加速器は電源更新作業延長のため、照射試験は実施出来なかった。そこでR4年度はセンサーの読出し回路の改良作業のみを実施し、本研究はR5年度へ延長した。しかし、R5年度のMR陽子加速器は当初予定よりも運転期間が大幅に短縮され、照射試験は実施出来なかった。そこで、ビームに起因する電場擾乱を再現し、これをレーザー照射により増幅することで信号検知可能かどうか、実験室で研究した。
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